生産したナマズは、ウナギの代わりにかば焼きにして「ナマズ重」として提供されることを想定する。2016年夏の土用の丑の日に合わせて100トン以上を出荷する計画で、まずは1億円の売上高を見込む。中長期的には出荷量を1600トン、売上高で20億円程度に増やすことを目指している。11月中旬、大阪市内で開いた会社設立の発表会見で、有路准教授は「ナマズは小骨が少なく食べやすい。普段食べる食品として普及させたい」と意気込みを語った。

 愛媛県と鹿児島県を舞台に進む、2種類の魚の開発プロジェクト。2016年はこれらの研究が実を結び、本格的に市場に流通する見通しで、代替魚が脚光を浴びる1年になりそうだ。

 クロマグロやウナギの代替として新たな魚の研究が相次いで進むのには、ここ最近の、水産資源の急速な減少に対する関係者の強い危機感がある。

 水産庁のまとめによると、太平洋のクロマグロの漁獲量は、2005年に3万トン近くあったが、2012年には約1万5000トンとほぼ半減。国内では、30kg未満の小型魚の年間漁獲量に上限を設けるなどの規制を今年導入した。

 ウナギについてもニホンウナギが絶滅危惧種に指定され、稚魚のシラスウナギの漁獲を制限。2016年以降はワシントン条約で、さらに規制が進む可能性が高い。農林水産省と総務省によると、ウナギ類の総供給量は2000年頃には15万~16万トンはあったが、2014年には4分の1の、4万トンにまで落ち込んだ。

気候変動や担い手不足響く

 マグロやウナギほどの落ち込みではないにしても、イワシ、サンマをはじめ流通量が比較的多い魚の漁獲高も減少傾向にある。海水温の上昇など気候変動による面も大きいが、国内漁業者の人手不足も深刻だ。

 農水省によると、2013年の国内の漁業就業者数は約18万人で、10年前から24%減った。天候や漁場によって漁獲高が大きく変わり、収入は安定しにくい。危険を伴う作業も多い。そのため若い世代を中心に漁業離れが進み、高齢化と後継者不在に悩まされている。

漁業の衰退が続く
●生産額と就業者数
漁業の衰退が続く<br/>●生産額と就業者数
注:2011、2012年の漁業就業者数は岩手、宮城、福島3県を除く
出所:農林水産省
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 担い手不足が響き、漁業生産額も2013年は約1兆4300億円と、10年前から1割減った。

 実は代替魚は、これまでの日本人の食卓でも身近な存在だ。その象徴的な例が、「子持ちシシャモ」として広く流通するカラフトシシャモ。輸入物だが、北海道の太平洋岸にのみ生息する日本固有のシシャモの漁獲高が減るのに伴って代わりに使われる機会が増え、普及した。今や本家のシシャモをもしのぐ一般的な商品になった。飲食店では、サケの代わりにニジマスを口にする機会も多い。スマや「ウナギ味のナマズ」の登場で、代替魚の種類はさらに広がることになる。

 水産資源の不足を補うもう一つの方法が、従来は地域で消費されるか捨てられ、国内全体ではあまり流通してこなかった「マイナー魚(未利用魚)」の活用だ。その取り組みも国内各地で広がりを見せている。

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