石材の採掘も盛んで、小豆島の石は大阪城の石垣に使われた歴史もあり、今も湾岸工事用などで需要がある。こうしたことから、地場企業の経営層や地権者など富裕層が多く、実際、島を歩けば“オリーブ御殿”“しょうゆ御殿”をいくつも見かけることができる。

 東京都内で発生する侵入窃盗が世田谷区と新宿区に集中するように(警視庁の自治体別侵入窃盗発生件数・平成26年より)、所得が高く資産が多い世帯が集積する地域は当然、犯罪の標的になりやすい。小豆島も例外ではなく、近畿・中国・四国地方の主要都市から近いこともあり、昭和の時代から、本土から来た押し売りに、高齢の島民が、20万円以上の高額ふとんや電気ポット、エセ健康食品などを売り付けられる被害が報告されていた。

「グロソブの島」で悪党吸引

 そんな状況に輪をかけて、2000年代前半以降、「小豆島=投資好きの富裕層が暮らす島」というイメージが全国的に広まってしまった。きっかけは、当時、絶大な人気を誇った投資信託「グローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)」が現地で爆発的に売れ、一部メディアで「グロソブの島」などと紹介されたことだ。

 主要先進国のソブリン債券を主な投資対象とするグロソブは、毎月分配型投資信託の先駆けとして、2000年頃から全国的に流行。2000年代初頭には、7000円前後の基準価額で毎月1万口当たり60円の分配金が出ていた。仮に2000万円投資していれば毎月17万円、2億円なら170万円の分配金が出ていたことになる。年金だけでは心もとないと考えていた高齢者が、低リスクで毎月の収入を確保する手段として買い求めたのも無理はない。

 その傾向が顕著に表れたのが小豆島だった。2007年頃には、人口が3万人程度の小豆島で、約100億円分のグロソブが保有されていたという。

 「もともと資産がある上、島内に娯楽が少なくカネの使い道がないため、投資に回せる資金が多い。地域の人々の多くは顔見知りのため、『投資信託でもうけたカネで車を買い替えた』といった噂はすぐ伝わる。遅れてなるものかと、資産を持つ島民の多くが投資に走ってしまった」とある島民は説明する。

 「『グロソブ、買った?』が島の高齢者の間の合言葉。持っていなければ仲間に入れなかった」と当時の現地の様子を振り返るのは、金融商品に詳しいファイナンシャルリサーチの深野康彦氏だ。

 こうして、小豆島は詐欺グループの間で「一定の資産を保有し、投資に興味がある高齢者が数多く暮らす島」と位置付けられてしまった。香川県小豆県民センター相談員の平林氏は、「今後も悪質な金融詐欺に遭う島民が増えないかとても懸念している。島に両親を残し都会で暮らしている元島民はできるだけ連絡し、コミュニケーションを密にしてほしい」と訴える。

 だが、仮に、当局の啓蒙などによって詐欺商法を防いだとしても、金融関連のトラブルに悩むこの島の高齢者は今後、減らない可能性もある。彼らに悩みの種を持ち込んでいるのは、“裏”の金融詐欺業者だけではないからだ。