2013年に施行された改正労働契約法は、契約更新の繰り返しが通算5年を超えたら、労働者が希望すれば無期契約となる内容が盛り込まれている。いずれも、期間に定めのある不安定な雇用形態から、無期転換を明確に推し進める内容だ。

 だが、法改正はここ2年ほどで起きた話だ。5年も前に、勝川氏はどうやって非正規雇用という状況から抜け出したのだろうか。そこには、1947年に設立しパナソニックなど製造や物流企業の業務請負で成長してきた川相商事が社運を賭けて実施した、ある取り組みがあった。

 勝川氏は関西にある有名私立大学の電子工学科を卒業した。在学中から派遣社員として製造現場で働いていたという。卒業は就職氷河期と呼ばれる時期ではあったが、学歴から考えれば入社できる企業は少なくなかったはずだ。

 だが、勝川氏は当時、就職活動をしなかった。「いずれ地元の九州に帰るつもりだったし、夜のバーテンダーの仕事にも魅力を感じていた」と振り返る。だが、製造現場で非正規労働者として年を重ねるとともに、仕事を掛け持ちする体力と気力はそがれていった。

正社員登用の道は厳しい
●非正規雇用のループに落ち込んでいく構図

 正社員になる第1ステップである、新卒一括採用。そこから漏れると、日本の労働市場では再チャレンジのチャンスが極端に少なくなる。正社員経験がないまま、派遣と契約社員を繰り返してきたことしか、職務経歴書に書けなくなるからだ。かくして、正社員の募集では見向きもされなくなっていく。

 だが、勝川氏には転機が訪れた。2010年4月、川相商事が非正規社員を正社員に登用することを目的とした研修、「創喜感働塾」を始めたのだ。勝川氏は、上司の勧めで第1期生となった。

金銭負担一切なし

 「創喜感働塾の研修内容を知った時は驚いた。ここまで内容が充実したものは見たことがない」。製造請負や派遣業界に詳しい船井総合研究所コンサルタントの山内栄人氏は、こう評価する。いったい、どのような内容なのか。

川相商事の「創喜感働塾」の概要
入塾条件
現在契約社員などで正社員を目指す人。在塾期間中は、指定現場で実習
期 間
6カ月間。金曜は座学(約150時間)。月曜から木曜は学びながら働く(約650時間)
研修内容
OJT(品質管理、安全衛生管理、工程管理の基礎)。ヒューマンスキル(マナー、コミュニケーション、リーダーシップ、人生の目標設計など)。テクニカルスキル(ISOマネジメントシステム、製造業の業務理解、衛生管理者育成、PC、営業など)
費 用
無料。テキスト支給。実習用パソコン貸与。第一種衛生管理者の資格試験試験の受験料は会社負担
給 与
フルタイム勤務の社員と同額

 研修期間は6カ月。月曜日から木曜日までは学びながら通常通り現場で働き、金曜日は丸1日研修だ。合格率が56.3%という国家試験「第一種衛生管理者」の取得を義務付けるので、日頃の勉強も欠かせない。欠席日数が2割に達したら、理由を問わず退塾となる。

 ただし、塾生に金銭的な負担は発生しない。給料は週5日勤務の時と同じ。教材は支給、パソコンは貸与、第一種衛生管理者資格の受験費用も会社が負担する。