北谷町役場は、実験路線の先に、壮大な計画を描いている。

 「そのまま、路線を北西に広がる住宅地まで延ばしたい。無料で町内を移動できる交通手段になる」(北谷町役場の勢理客一之・企画調整係長)。町は、財政負担も覚悟の上で、無人EV交通システムを地域交通の毛細血管にしていく将来図を描いている。

再エネで石油火力が止まる

 原油が途絶え、ガソリン価格の高騰がEV社会の到来を後押しするように、エネルギーの生産もここ数年で、急速に「石油後」に向けて動き出している。

 ペトロブラスの撤退と製油所消滅もあって、沖縄本島の3基ある石油火力発電所が次々と停止し、2基はほぼ動いていない。「新電力会社から供給される電力が増えれば、コストの高い発電所から止めていくしかない」(沖縄電力幹部)

 県外との送電網もない「電力の孤島」である沖縄は、島内でエネルギーの生産と消費を一致させなければならない。原子力発電所はなく、現在はコストが安い石炭火力をベース電源としてフル稼働させている状態だ。

 夏のピーク時などに停止中の石油火力を回しているが、その操業にとどめを刺す計画が打ち出された。

 10月10日、約5万キロワットのバイオマス発電所が、新電力大手イーレックスの子会社によってうるま市に建設されると発表された。21年に供給を開始し、沖縄ガスとの合弁会社「沖縄ガスニューパワー」が販売する。県内最大の再エネ発電所となり、この1基で沖縄県の電力の4%を賄う能力を持つ。

巨大再エネ発電所
巨大再エネ発電所
うるま市の工業地帯に、新電力大手イーレックスが建設を発表したバイオマス発電所。県内最大の再エネ発電所となる

 発表の翌日、沖縄電力の本社は静まりかえっていた。

 「うちには、再エネも含めて発電所新設の計画はないので、これからも再エネに(発電シェアを)削られていく」(沖電幹部)。このバイオマス発電所によって、沖縄の石油火力の歴史は幕を閉じようとしている。

 そして、沖縄の企業が、新電力に雪崩を打って流れている。昨年、沖ガスニューパワーが設立されると、まだ自前の電源が確保されていない状況にもかかわらず、申し込みが殺到し、1カ月で募集を打ち切る事態となった。

 「エネルギーが、沖縄にとって死活問題だと痛感した」。イーレックスの阪本敏康執行役員はそう話す。沖縄で再エネやEVが推し進められる背景には、エネルギーで苦しみ抜いた歴史がある。

 県内唯一の製鉄会社、拓南製鉄は、本土より2割も高い電力料金では電炉メーカーとして経営が成り立たないため、廃材から油を絞り出す技術開発を続けた。電力を大量に使う製造業やホテルは、独自の発電や節電の工夫によって苦境を乗り越えてきた。

 石油というエネルギーの大黒柱を失いかけている事実も、この地を突き動かす。

 「人口増加と経済成長が続いているが、怖いのは、それを受け止めるインフラとのギャップが広がっていることだ」。りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は、アジアから流れ込む観光客の増加もあって、好調に推移する経済指標を横目に見ながらも、その一方でエネルギーをはじめとした受け皿の破綻を危惧する。

 「沖縄で新エネルギーの実験が繰り返されている。自然からエネルギーを取り出さなければ乗り切れないという危機感が根底にある」

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