「今回のEV人気は、ブームでは終わらない」(仲井間氏)

新型EV投入
新型EV投入
今年9月、日産自動車はEV(電気自動車)「新型リーフ」を発表、航続距離が400kmに達し、沖縄本島を南北に2往復できる

 実は、沖縄は10年の初代リーフに期待して、その後、急速にしぼんだ苦い経験がある。大手レンタカー3社が計220台の初代リーフを島内の店舗に投入した。ところが、思ったように貸し出しが伸びない。気温が高い沖縄では、エアコンによるバッテリーの消費もあって、観光客は常に充電量を気にしながら運転することになるからだ。あるレンタカー会社は「数十台あったリーフをどんどん減らしていき、ホームページに載せるための1台だけ残していた」と打ち明ける。

 だが、この時の遺産が、新型リーフの登場と相乗効果を生み出している。

充電器の拡大
充電器の拡大
沖縄本島に約120カ所設置されているEV充電器。ファミリーマートでも“給油”できる

 初代リーフの発売に合わせて、地元有力企業や沖縄ファミリーマートなど26社が出資して、充電器の設置運営会社を立ち上げた。会社は破綻したが、充電器の多くは今も残り、増設が続く。現在、沖縄本島だけで約120カ所の充電所が設置されている。

 「新型リーフの航続距離を考えれば、多くのホテルや観光地、商業施設で充電できるため、沖縄で“ガス欠”の不安はなくなった」(仲井間氏)

クルマの地産地消

 EVのインフラが充実している状況で、「沖縄産EV」の計画が進んでいる。

 うるま市の工業団地の一角にある「ものづくりネットワーク沖縄」は、地元の整備工場5社と組んで、改造電気自動車(コンバートEV)を来年からテスト販売する。

地産「町乗りEV」
地産「町乗りEV」
うるま市の企業が中心となって開発された沖縄産のEV。開発者たちは改造EVを近く発売する

 「コンセプトはクルマの地産地消」

 ビークル開発部の松田尊部長はそう狙いを語る。沖縄では主婦や高齢者もクルマを運転するが、1日の走行距離が30km未満の「町乗り派」が多い。県外から持ち込まれる安い中古車を購入して乗り潰す。だが、「廃車といっても、エンジンが使えないだけで、車体はしっかりしている」(松田氏)。そこで、エンジンを取り出して、そこにモーターと蓄電池を積み込み、EVに改造する。

 県内の15社が集まり、12年にEVを完成させた。同年に、中古車をEVに改造することにも成功し、4台はうるま市役所が公用車に採用した。

 そこから、「市販」の構想がスタートする。最大の課題は、モーターだった。沖縄は軽自動車比率が高いが、市販のモーターでは出力が合わない。カート用モーターでは出力が弱く、普通車用だと逆にオーバースペックになる。

 「自分たちで作るしかない」。15年、周囲の産業団地の企業と協力してモーターの開発に着手し、できる限り沖縄産のパーツを使用した「地産モーター」を生み出した。アルミ材や鋼材は沖縄の企業から調達している。バッテリーと半導体以外は、地元調達が可能だという。改造EVの価格は100万円前後まで下がったが、発売までにさらに低価格化を狙う。目標は60万円で、燃料費が約7分の1になる計算なので、住民の選択肢に入るとみる。

 「ノウハウは沖縄には開放するが、県外に販売するつもりはない。地元に産業と雇用を作り出す」(松田氏)

 EVで町を埋め尽くす──。それは、アルプスの麓、スイス・ツェルマットの町並みをモデルにしている。ガソリン車など内燃機関を搭載したクルマの乗り入れを禁止している。古い町並みと自然に適合したクリーンなクルマだけが、乗り入れを許される。

 その先には、EVを交通インフラに定着させる構想がある。高齢化社会もにらんで、無人自動走行カート(小型バス)の実験場として、沖縄が全国の先頭を走っている。

 今年3月、交通弱者を救うため、経済産業省や国土交通省を中心とした官民連携の実証実験が始まった。全国33の自治体が名乗りを上げたが、選ばれた4カ所の1つが沖縄の北谷町だった。

無人EVカート
無人EVカート
北谷町で実験が進むEVの自動走行と、開発リーダーの産業技術総合研究所の加藤晋・研究ラボ長

 「地域のラストマイルを走る“足”が必要だが、実験地として、地元の理解が深いので、どこよりも早く実証データが得られる」。開発を担当する産業技術総合研究所の加藤晋・端末交通システム研究ラボ長は、北谷が選ばれたポイントをそう説明する。すでにホテルや商業地が並ぶ海岸線3kmの路線のうち1kmに誘導線が埋め込まれ、無人のEVカートが走行している。公有地のため、ナンバープレートを取得する必要がない。他の実験地は公道を走るため、まだ走行には時間がかかり、北谷町がプロジェクトの先頭を走る。

 すでにレストランや店舗の前を走り抜けるが、人や障害物があれば停止したり、回避する。こうしたデータが蓄積され、車体の改良も進み、それが他の地域に持ち込まれる。

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