ダークホースの野望

製油所消滅でガソリンが高騰
●沖縄県のガソリン価格の推移
製油所消滅でガソリンが高騰<br />●沖縄県のガソリン価格の推移
注:レギュラーガソリン1リットルの店頭現金価格。資源エネルギー庁調べ

 沖縄のガソリン価格は、上昇が止まらない(上のグラフ)。「かつては、西原製油所の稼働率を維持するために大量の余剰ガソリンが生産され、安価で市場に流れていた」(地元石油販売店社長)。それは、日本の石油業界全体が、古い製油所をフル操業して、安売りに走っている構図と同じだった。製油所が停止した15年4月以降、しばらくはペトロブラスがガソリンを国内外から調達し、南西石油のタンクに備蓄して沖縄県内に安価で供給していた。

 だが、転機は完全撤退が視野に入ってきた16年の年初に訪れた。沖縄への輸送コストを卸価格に転嫁し始め、価格は一転、上昇局面に入る。さらに、ペトロブラスが販売事業を16年3月末で打ち切り、代わって東燃ゼネラルが、タンクを貸りて沖縄にガソリンを供給する体制となった。

 「東燃はこの時、タンク賃貸料の負担もあって、卸価格を一気に5.5円も上げた。ある元売り会社は、系列スタンドの破綻を恐れて、値上げの半分近い額を補塡する羽目になった」。沖縄の石油関係者はそう証言する。

 そして昨年末、ペトロブラスの完全撤退が完了すると、南西石油の親会社は太陽石油に代わった。愛媛県に製油所を持つ中堅石油元売りの買収劇は、まったく予想外の展開だった。

 「業界トップのJXTGが本命視され、中国や韓国勢の入札もささやかれていた」(地元販売店役員)。だが、ふたを開けると、太陽石油が146億円で落札していた。「他社の入札額は70億〜80億円といわれる。なぜ、これほど力を入れるのか」

 買収額の裏にある「太陽石油の野望」が、業界を疑心暗鬼に陥れている。

 今年6月から、太陽石油の四国事業所(愛媛県今治市)のガソリンが輸送され、卸価格がさらに1.6円上がった。「払いすぎた買収金額を回収しているのではないか」。そんな怨嗟の声も漏れる。そして、最終シナリオがささやかれる。

 「太陽石油は、いつか自社系列のガソリンスタンドを沖縄で展開するはずだ」(販売店)。その時、沖縄の太陽系列以外のスタンドは高い卸価格を提示され、淘汰の嵐が吹き荒れる。

「EV大国」の挫折と再興

 エネルギーを海の向こうの資源や企業に依存する構図は限界に近づいている。高騰を続けるガソリン価格は、公共交通機関が脆弱な沖縄の「クルマ社会」に変化を起こし始めている。

 10月上旬の3連休のこと。琉球日産自動車の仲井間勝也EV推進室課長は、思いがけない光景を目の当たりにした。那覇で最大級の祭りが開催されるため、通常は客足が遠のく。だが、店舗は試乗を希望する客であふれ返った。

 目当ては、日産自動車が発売したEV(電気自動車)「新型リーフ」。燃料コストが安いEVへの期待がにわかに高まっている。航続距離は400kmと、旧型の280kmから大幅に延ばした。沖縄本島は、南北約100kmのため、2往復できる計算になる。しかも、日産は充電を月額2000円で提供するサービスも用意している。

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