原発なき沖縄で、ついに石油製品の生産までが止まった。ガソリン価格が高騰する中、電気自動車と再生可能エネルギーに未来をかける。南端の挑戦は、日本の未来図でもある──エネルギー、大転換への挑戦を追う。

(日経ビジネス2017年11月6日号より転載)

製油所消滅
南西石油が2年前に運転を停止した西原製油所。沖縄県内で最後に残った精製設備は、塩害もあって再稼働は不可能とされる

 沖縄県西原町の高台から中城湾を望むと、赤茶けた巨大な生産設備が、人けもなく静まり返っていた。

 沖縄最後の石油精製所──。かつて島内に3製油所が稼働していたが、採算の悪化で閉鎖が続き、この南西石油・西原製油所が「最後の砦」となっていた。だが、2年前に親会社のブラジル国営石油会社ペトロブラスが突如、閉鎖を発表し、沖縄の産業界に衝撃が走った。日産原油処理能力10万バレルの設備が止まることは、島内のエネルギー事情が逼迫することを意味する。

 何度となく海外の巨大資本が「救世主」として買収すると噂された。だが、そんな最後の望みも泡と消えた。

 「再稼働はあり得ない。長い間、修繕していないので塩害が激しく、もう動かないだろう」(南西石油幹部)

 わずか10年前、沖縄は石油産業で潤う未来図を描いていた。石油メジャーに比肩するペトロブラスが沖縄に目をつけたからだ。2008年、東燃ゼネラル石油(現JXTGホールディングス)傘下だった南西石油を55億円で買収し、アジアの拠点として機能させる計画だった。そのため、1000億円もの設備投資計画まで練られていた。

 だが、リーマンショックと汚職疑惑でペトロブラスの経営が揺らぎ、設備増強策は最後まで実現しなかった。

 「もはや、沖縄で精製しても、価格の優位性がなくなった」。沖縄県石油商業組合の濱元清理事長は、投資のタイミングを逸しているうちに老朽化が進み、競争力を失ったと指摘する。

 それは、日本の石油業界を覆う窮状とも重なる。古くて規模が小さい製油所は、国際競争力が低下し、その役割を終えようとしている。

 「石油の世紀」の終焉。そして、沖縄のエネルギー業界は大きく動き出す。