そうした流れにも変化が見え始めた。審査期間の短縮を目指し、対策を打ち始めているのだ。審査機関のPMDAは、医療機器承認の審査員を大幅に増強。2008年の47人に対し、2012年には倍以上の99人とした。医療機器の登録を検討する企業や団体に対してアドバイスを行う面談も積極的に実施している。結果は徐々に見え始めている。2007年には14.4カ月かかっていた新医療機器の審査期間は、2012年には6.3カ月にまで短縮。「米国と比べても遜色ない審査スピードになっている」(厚労省医薬食品局の佐々木正大氏)。

5月に行われた「ロボット革命イニシアティブ協議会」の創立記念懇親会で安倍晋三首相は「日本発のロボット革命を起こす」と意気込んだ(写真=共同通信)
医療機器における貿易赤字は増加
●医療機器の輸出入額の推移
出所:厚労省 「薬事工業生産動態統計」

 経産省や内閣府が中心となってロボット市場を拡大していこうという取り組みもある。経産省が1月に発表した「ロボット新戦略」では、医療分野のロボットに関する具体的な言及も見受けられた。医療機器としての認可や承認手続きをさらに見直すことや、ロボット技術を活用した医療関連機器の実用化支援を2015~19年度の5年間で100件以上実施するとしている。

 手術支援ロボットは2000年初頭に東芝や日立製作所が参入し、撤退したという歴史がある。「命を扱うという点でリスクが大きく、しくじれば企業ブランドが危うい。そこまで懸けてやるほど大きい商機が見えているわけでもないという状況だった」と早稲田大学の藤江正克教授は話す。だが、そこにダビンチという巨人が現れ、ある程度の市場性を証明してくれた。「ここからは日本のお家芸。ダビンチといえど、たかだか世界で3000台。巻き返しは図れる」と藤江氏は見る。

 もっとも、ダビンチの牙城を切り崩せるかどうかは未知数なのもまた事実だ。医師の中には、「ダビンチがこのまま普及すれば、国内外どこででも同じクオリティーの手術ができる。あえてほかのロボットを試そうとは思わない」(ニューハート・ワタナベ国際病院の渡邊剛総長)と、ダビンチ仕様の“標準化”を望む声もある。

 医療機器の貿易赤字は、減る兆しどころか微増傾向を続けており、特にダビンチのように患者との接触度合いの高いハイリスクの医療機器における輸入超過は顕著だ。それだけに国産手術ロボットへの期待は大きく、経産省では2020年ごろまでに「医療機器の輸出額を2011年の2倍(約1兆円)にする」と大きな目標を掲げる。

 かつては「ロボット大国」と言われながら、近年精彩を欠いている日本が医療業界から再生ののろしを上げることができるのか。手術支援ロボット分野での主導権争いは、日本にとって「ロボット大国」復活最後のチャンスになるかもしれない。

(日経ビジネス2015年10月5日号より転載)