最安値を提示しているのがドコモ。1秒間の転送速度を示す10メガbps当たりの接続料は2014年度に100万円を割り込み、2008年度と比べ10分の1以下となった。MVNOの多くがドコモ回線を利用しているのはこのためだ。
キャリアはMVNO向けに回線を貸し出すよりも、自社の利用者にサービスを提供した方が収益性は高いという。とはいえキャリア側も、MVNOの拡大を無視できなくなっている。
ドコモ回線にはMVNOを通じた利用者の流入が起きているとみられるが、一方で「当社から(MVNOに)出ていく動きとないまぜになってる」(加藤薫社長)ため、複雑な立場にある。MVNOと競争するだけでなく、連携することで共存を図る道も模索する。
キャリア3社の中で接続料が最も高いソフトバンクは「(MVNOに)流出している状況はある」(ソフトバンクの伊藤健一郎・渉外本部相互接続部部長)という。「何らかの手は打つ必要がある。既にMVNOとの交渉も進めている」(同)。KDDIはモバイルデータ通信とMVNO事業をそれぞれ展開していた子会社2社を2015年10月に合併させ、新しいサービスを提供していく考えだ。
MVNO拡大狙う総務省
総務省は2016年までにMVNOの回線数を1500万回線にすることを目標にしており、その拡大を後押しする。2014年12月には各キャリアにSIMロックの解除を義務付けた。
SIMロックとは、キャリアが販売する端末で他社のSIMカードを使えないようにすること。今年5月以降に販売された端末は昨年11月以降から基本的にロックを解除し、キャリア以外のSIMカードにも対応できるようにしなければならない。
「ロック解除しても、通信規格が(他社のSIMカードとは)合わない端末も多いので、大きな動きにはなりにくい」(ソフトバンクの伊藤部長)とキャリア側は慎重に見る一方で、ビッグローブの海老原三樹・執行役員は「キャリアのスマホをそのまま使いたいという顧客にも、当社のSIMカードを利用してもらえる」と期待する。
総務省は、各キャリアが実施しているいわゆる「2年縛り」にもメスを入れた。2年続けて契約する人には月々の通信料金を割り引く一方で、中途解約すれば9500円の解約料を徴収される。解約期間が1カ月しかなく、自動更新されるのも問題視され「各社の自発的な見直しを期待している」(総務省消費者行政課)という。
普及のカギは独自サービス
正確な統計はないが、SIMカードで音声やデータ通信を提供するMVNOの事業者数は拡大を続けている。総務省の資料によれば、MVNO全体の事業者数は1年間で20社近く増加した。この統計には設備を持たないMVNOは入っておらず、全体では200社程度に増えているとみられている。
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