新市場計画には暗雲
もっとも、開発計画がすべて順調に進んでいるわけではない。例えば、築地から豊洲に移転される新市場。2016年11月の開場を目指し、建設工事が佳境を迎えている。完成すれば延べ面積は現在の約30万平方メートルから約40万平方メートルに増床される。
この新市場を巡って暗雲がたれ込めている。場外観光の目玉である、スパなども併設した「千客万来施設」の運営事業者に名乗りを上げていた大和ハウス工業と寿司チェーン「すしざんまい」などを運営する喜代村が、都や市場関係者と折り合いがつかず撤退を決定。新市場と千客万来施設の同時開業は絶望的な状況になっている。
交通インフラの整備にも懸念が浮上している。東京地下鉄(東京メトロ)は有楽町線を豊洲から住吉まで延ばし、新交通システムのゆりかもめは豊洲から勝どきまで延伸する青写真を描くが、具体像はまだ見えず、実現しても五輪開催に間に合わない可能性が高い。
環状2号線が開通すれば、都心からのクルマでのアクセスは飛躍的に向上する。環状2号線を使って都心とベイエリアとを結ぶBRT(バス高速輸送システム)の運行も検討されている。
「しかし、」と前出のスタイルアクトの沖氏は指摘する。「ベイエリアは運河で隔絶され、橋しかアクセスの方法がない。不動産の価値を上げるには鉄道を通すしかない」。
五輪後も増殖し続ける見通しのベイエリアだが、五輪の閉幕とともに人の往来が急減し、活気を失う可能性も否めない。そうならないためにも、人を引き寄せ続ける街づくりが必要だ。
都の計画通りにMICEの中心地となり、国内外から訪れた人々がここを拠点にして、銀座など周辺の街にも足を延ばす──。これが「絵に描いた餅」にならないよう行政と民間が連携して同エリアを盛り上げていくことが求められる。
(日経ビジネス2015年6月29日号より転載)
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