新しい観光誘致の概念も

 一方で五輪が終わった後も、引き続き人が集まってにぎわうのかという懸念もくすぶる。それを解消する可能性を秘めた構想が、実は既に動き出している。「MICE(マイス)」だ。

ベイエリアは世界の物流拠点でもある
●東京港の取り扱い貨物量
ベイエリアは世界の物流拠点でもある<br/>●東京港の取り扱い貨物量
●主要港輸入通関額(2013年、上位7港)
●主要港輸入通関額(2013年、上位7港)
出所:東京都港湾局

 MICEとは、「Meeting(会議)」「Incentive travel(報奨・研修旅行)」「Convention(学会)」「Exhibition(展示会)」の頭文字を取った観光ビジネス用語。文字通り、これらの用途の受け皿となる施設を整備して、来訪者を増やす取り組みを指す。

 MICEの核になるのは、コンベンションセンター。ひとたび大規模な国際会議が開催されれば、一気に何千、何万人という規模の流入が期待できる。近年、シンガポールなどがMICEによって来訪者を増やしている。

 MICEは、政府が年間2000万人という目標を掲げるインバウンド(訪日外国人)誘致策の要として、観光庁なども推進に力を入れている。都は2012年、ベイエリアをMICEの拠点とするため、進出企業に補助金を交付する制度を創設した。五輪とその後を見据えて、民間を巻き込んでMICEに必要なインフラ整備を進める狙いだ。

 補助金の交付が決まったものには、例えば公衆無線LAN「Wi-Fi」を無料で提供する環境を整備するソフトバンクモバイルの事業などがある。

 冒頭で紹介したBMWは、都が公募した青海地区の土地約2万7000平方メートルの暫定利用(10年間)に応募。MICEの推進に寄与すると評価されて、複数の応募企業から選出された。都は、ショールームへの来場者数を年間約250万人と試算。この数字は三重県鈴鹿市の「鈴鹿サーキット」(2013年度、約196万人)を大きく上回る。

 試算の根拠の一つが、ショールームに併設される国際会議対応型のホール。「開業は1年後だが、既に医師会などから利用の打診が来ている」とBMWの伊集院氏は明かす。

 ホールの併設には、学会などで訪れた人についでに最新モデルに試乗してもらい、商談を進めることもできるという算段がある。BMWグループの報奨・研修旅行や、顧客の招待旅行での利用も想定している。英語、ドイツ語、中国語、韓国語など多言語に対応したスタッフを擁し、イスラム教で禁じられている食材や調理法などを指す「ハラル」にも対応した飲食店も構える。

 つまり、BMWのショールームは単にクルマ好きのためのものだけでなく、観光やビジネスの拠点として人を引き寄せる仕掛けになるわけだ。都は、BMWのショールームが呼び水になって、MICE事業へ参加する企業がさらに増えることを期待している。

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