再開発のラストリゾート

 だが状況は変わろうとしている。駅の南口では、2016年開設予定の、国土交通省が約1600億円を投じる一大事業が進んでいる。歩行者広場と駅、バス乗り場、タクシー乗り場を1つに集約した複合交通ターミナル「新宿交通結節点」の完成が近づいているからだ。

 新宿駅南口には駅前広場に相当する空間がない。そのため客待ちタクシーや一般車の乗降が、甲州街道の直進車の走行を妨げている問題が以前より指摘されていた。

 この雑多な状態を収める役割を果たすハブを担うのが新宿交通結節点だ。新宿駅の線路の上を通る甲州街道に横付けする形で人工地盤を線路上空に設置してその上に4階建ての建物を作る。1階部分は駅ホーム、2階の駅施設および歩行者広場はサザンテラスや新宿南口改札とフラットにつながっている。3階はタクシー・一般車乗降場、4階は高速バスターミナルとなる。車両は甲州街道から分岐する車道を上って交通ターミナル内部に入る構造だ。

 「新宿駅西口や都庁前駅など約10カ所に散らばっていたバス乗り場がまとまるメリットが一番大きいだろう」と国土交通省東京国道事務所の鹿島秀昭・事業対策官は話す。

 バス乗り場が集約され、タクシー乗り場が整備されることで、これまで電車を降りてから、乗り換えのため駅から離れた場所にある各バス停への移動を強いられていた人々の利便性が大きく向上する。これまで使いづらいと新宿駅を避けていた人も、新宿駅に向かうきっかけを作るだろう。

 利便性向上による客層の拡大をチャンスとして取り込もうとする動きも目立ってきた。新宿駅南口エリアの開発だ。南口は1996年、JR東日本の旧操車場跡に建てられた新宿高島屋を含む「タカシマヤ タイムズスクエア」の開業をきっかけに注目された。住所で見ると新宿区ではなく渋谷区に含まれるが、同じ駅前でも東側や西側よりも開発の余地が残されている。街づくりの自由度が高い「新宿再開発のラストリゾート」とも呼べるエリアである。

 だが、2000年に完成したNTTドコモ代々木ビル以降、不況の影響もあり目立った開発は進んでいない。そのため同じ新宿駅前でも取り残されていた。

 しかし交通ターミナルの開設に合わせる形で現在、JR東日本が高層ビルを建てている。地上33階建てのビルで、6階から33階は、計6000人収容可能なオフィスフロアとなる。1階から5階まではルミネが手掛ける商業施設が入る。既存のルミネのターゲット層より上の世代を意識した施設にするという。

 「あまり新宿に来ない人を呼び込みたい」と、JR東日本は、変化の風を商機とする構えだ。

 新宿駅南口周辺の開発はこれだけではない。東京都が2020年の東京五輪を見据え、新宿御苑付近にある環状第5の1号線の未開通区間の整備を本格化しているからだ。

 環状第5の1号線とは、池袋、新宿、渋谷をつなぐ明治通りの大部分を占める都市計画道路だ。計画では、環状第5の1号線は新宿駅周辺に入る手前で2つに分岐している。

 本線は新宿二丁目交差点を経由して新宿御苑のすぐ横を通って渋谷方面へ、支線は伊勢丹新宿店のある新宿三丁目交差点や、甲州街道と交差する新宿四丁目交差点を通り、本線と合流して渋谷方面へ向かう計画だった。

明治通り東側エリアへの人の流れを増やす