2000年以降に開業した大型施設は複合型が主流だ。丸の内ビルディングや六本木ヒルズなどのように、商業施設とオフィス、時にはホテルも一体となっている。一昔前と違い、オン・オフを問わずに楽しめるシームレスな街が好まれているのだ。

 商業施設の開発自体が街づくりと一体となるのが主流となる中で、新宿はそれが実現できない状況だった。線路をはさんで東側と西側が分かれてしまい、人の行き来を遮っている。「東は遊ぶ街で西は働く街」という固定的なイメージが打ち破れなくなっていた。「新宿は色がついていて開発しにくい」──開発業界の間ではこんな言葉さえ、ささやかれていた。街づくりの最前線から取り残されてしまったのだ。

 新宿でも開発の動きがなかったわけではない。1990年代以降も東京オペラシティや新宿イーストサイドスクエアなど、新施設は定期的に誕生している。だが、それらはあくまでも新宿駅周辺から離れた場所での出来事だった。新宿駅から外に向かう方向で開発が進んできたのだ。

 だが、ここにきて交通の要所、新宿の潜在力を生かす再開発が本格化してきた。その突破口となるのが新宿駅の大改造だ。東西に分断された人の流れを統合しようという試みが、まもなく私たちの目の前に出現する。

「分かりやすい新宿駅」に

 現在、新宿駅地下1階の北側にある、東西にまたがる改札内通路(北通路)を歩くと、あちこちに工事中の囲いが立てられていることに気付くだろう。ここでは今、東と西の交流活発化の切り札となる、東西自由通路の創設工事が約115億円かけて進められている。

 現在、新宿駅の西口から改札内を通らずに東口に向かうには、駅の北側にあるガード下をくぐるか、南口を経由するなどして東口に行く必要がある。駅周辺を迂回しなければならない不便さが、線路を越えた人の往来を抑制する主な要因となっていた。

 だが2020年、北通路は改札外へと出されて、幅25mの東西自由通路として生まれ変わる。簡単に線路の向こう側へ行けるようになるのだ。駅の回遊性が高まることで、これまであまり駅の東側、あるいは西側に足を運ばなかった人も、互いを行き来する機会が増えるだろう。

 北通路を失った分不足するであろう改札内の空間は、現在の中央東口と中央西口改札をつなぐ通路(中央通路)と北通路の間の盛り土を取り除き、拡幅する。スペースを広げ、広場兼通路として活用する予定だ。

 広場ができれば、今までコの字型に分かれていた北通路と中央通路の2つの改札内通路も広場を通じてつながる。各々の通路ごとに作られていた改札口も整理され、人の流れは円滑になる。「分かりづらいと言われてきた新宿駅の構造がシンプルになる」と、東日本旅客鉄道(JR東日本)も工事のインパクトは大きいとみている。

 分かりにくさは、新宿の街としての弱さになっている。1960年代以降、日本経済の発展とともに新宿駅には次々と新しい鉄道路線、バス路線が開通し、各方面から人が集まるようになった。それに合わせ通路や建物が継ぎ足される形で作られた結果、駅内のみならず駅周りが複雑になってしまったのだ。歩道は狭く、待ち合わせや休憩スペースが不足している。その結果、ファミリー層や高齢者などが敬遠する街になってしまったことは否めない。

2016年、駅周りの交通機関が集約される
現在建設中の新宿交通結節点および新宿駅南口ビルの様子。甲州街道も拡幅され、雑多な印象は緩和される