IT企業の集積は断トツで渋谷
●東京23区対象エリア別のIT企業数と設立年
IT企業の集積は断トツで渋谷</br> ●東京23区対象エリア別のIT企業数と設立年

 風向きが変わったのは2012年に大規模再開発ビル「渋谷ヒカリエ」が開業してからだ。ディー・エヌ・エー(DeNA)などが入居したことでIT企業の再集積が加速。周辺にはこうした企業と取引のあるベンチャー企業が次々に入居した。人呼んで「ビットバレー2.0」という動きだ。

 ベンチャー企業を渋谷に呼び込むためのイベントは数多い。冒頭に紹介したsproutはそのうちの一つだ。日本IBM、ベンチャー企業の上場を支援するトーマツベンチャーサポート、空間デザイン・プロデュースを手掛けるツクルバ(渋谷区)の3社が主催した。

 こうした試みを後押ししている企業がある。「渋谷の大家」と言われる東京急行電鉄だ。今の流れを逃がすまいと、繰り出す布石は多岐にわたる。

 その一つがsproutのようなイベントに無償で場所を提供するといった活動だ。渋谷ヒカリエ8階に設けた交流スペースや渋谷に保有する他のビルの一部を提供、積極的にイベントを仕掛けている。既に「TED×Tokyo」や「Tokyo Work Design Week」など、特にクリエーティブ系の若者から支持されるイベントを誘致した。

 東急が「街ブランディング」と呼ぶこうした活動は、足元の収益には貢献しない。それでも熱心なのは将来のテナント候補を増やすことにつながるからだ。「今やオフィスビルを造って待ち構えていれば企業が入居する、マンションを造れば自動的に売れるという時代ではない。攻めの営業が必要だ」(東急電鉄幹部)。渋谷の大家はベンチャー企業に照準を定め、攻勢をかける。

「賃料で丸の内を抜きたい」

 渋谷駅周辺で東急電鉄、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東京メトロの3社による大規模再開発が進んでいる。今後2027年までに、駅周辺だけで8棟の超高層ビルがタケノコのように現れる。

「100年に1度」の大規模再開発
●渋谷駅周辺再開発の完成予想図
「100年に1度」の大規模再開発</br> ●渋谷駅周辺再開発の完成予想図
(写真=4点:吉成 大輔)
(写真=4点:吉成 大輔)

 渋谷駅真上に位置する駅街区には、駅周辺で最大級のオフィスと商業施設を併せ持った超高層ビル、東急東横線渋谷駅の跡地である南街区には、オフィス、ホテル、イベントホールの複合施設ができる。駅に隣接する道玄坂地区と桜丘口地区にも、再開発組合による超高層ビルが計画され、東急不動産が事業協力者として参画している。

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