梶田:それは仕方ないですよ(笑)。でも10年間で済んだからラッキーでした。太陽ニュートリノは30年以上ですから。

山口:30年以上も。そこをちょっと教えていただけますか?

梶田:太陽の核融合で生成されるニュートリノの観測数が理論の3分の1ぐらいだというのは、1960年代末から問題になっていたんです。いわゆる太陽ニュートリノ問題です。結局、ニュートリノ振動によるものだと明確に分かったのは2001年、2002年です。カナダで行われたプロジェクトが重要な貢献をしました。スーパーカミオカンデやカムランドという日本の研究も大きな貢献をしています。

ニュートリノの可能性

山口:太陽ニュートリノの話が出たついでにお聞きしたいんですけれど、ニュートリノはもちろん地球を突き抜けてしまう恐らく唯一の素粒子なわけですね。

梶田:ダークマター(暗黒物質)もそうかもしれません。

山口:ダークマターもですか。そうすると、例えば北朝鮮の核実験を観測するとか、あるいは原子炉を確認するとかいうこともできそうに思うんですけれど、スーパーカミオカンデでは無理なんでしょうか。

梶田:核実験から出てくるニュートリノは、恐らくそれほど多くないんです。もともとニュートリノを発見したアメリカのフレデリック・ライネスは、最初は核実験によるニュートリノを検出しようとしたのですが実現せず、原子炉によるニュートリノを確認し、1950年代後半にニュートリノの存在を証明しました。

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山口:あるいは、ニュートリノを何とか通信に使えないかと考える人たちもいると思います。スイスとフランスの国境にあるCERN(欧州合同原子核研究所)から、イタリアのグラン・サッソ山の研究施設までニュートリノを発射する実験をしたように、地球の裏側からの通信に使える可能性はないのでしょうか。

梶田:それは絶対、経済的にペイしないので成り立たないと思います。

山口:いちいちチェレンコフ光を見なければいけない。

梶田:つまり、観測できるだけのニュートリノを作るために、ものすごく大規模な装置が必要で、観測するほうも大変ですけど、受けるほうも大変です。それならば、少し遅いかもしれないけれども、地球をぐるっと回ったほうが実用的でしょうね。