小説『下町ロケット』に登場する神谷弁護士のモデルとなった敏腕「技術系弁護士」鮫島正洋氏が、日本企業や技術者のために知財戦略について語るシリーズを、総合技術情報サイト「日経テクノロジーオンライン」からお届けします。今回、取り上げるトピックは「オープンイノベーション」。

 「オープンイノべーション」という言葉は、5年ほど前から経済産業省が使い始めた用語です。当時は、大企業が「自前主義」に固執し続ければ、世の中の進展スピードについて行けず競争力をなくすから、イノベーションを積極的に他者から取り込む(オープン化する)、といった意味の言葉として使われていました。ちなみに、「オープンイノベーション」という言葉は経済産業省の発案ではなく、米国ハーバードビジネススクール助教授のヘンリー・チェスブロウ氏が提唱したと言われています。

 今では、企業が自前主義をやめ、他者の成果であっても積極的に取り入れるという意味でのオープンイノベーションは当たり前になっています。しかし、当時は「他社の技術を取り入れれば、研究開発担当取締役の首が飛ぶ」といったパニック的な“都市伝説”や、「日本の中小企業の技術を取り入れるとそうなる(首が飛ぶ)が、米国シリコンバレーのベンチャー企業からイノベーションを取り入れればよくやったとほめられる」という、逆差別的な都市伝説までまことしとやかに囁(ささ)かれていました。

 でも、それももう昔の話。今では軒並み大企業が新規事業開発部を立ち上げ、それをCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に発展させる時代となりました。ここ2年で生じた急速な変化により、万事改革スピードの遅い日本でも、トリガー次第でここまで変わる。これは驚きのみならず、賞賛に値すると私は思います。

 この変化の波に乗り、時代錯誤的な用語となっていた「オープンイノベーション」は、日本の大企業が日本のベンチャー企業のイノベーションを取り込み、「Team Japan」を形成して、両社が「Win-Win」の関係で事業を構築するという意味にデフォルメされつつあります。このデフォルメされた「オープンイノベーション」を、私は「第2次オープンイノベーション」と命名して論じています。