根岸:例えば運動会の100メートル競走で、速い子も遅い子もみんなそろってゴールするという話がありましたね。しかし学問であれ何であれ、「個の力」をもっと発揮できるようなシステムをゴールに据える必要があると思います。

山口:「個の力」を引き出し、もっと高める。大事ですね。世界で活躍している日本人のスポーツ選手や音楽家には「個の力」を感じますけれども、日本の学問の世界で「個の力」を引き出せていない部分となると、例えばどういうところに見いだせるでしょうか。

根岸:アカデミックの分野で1つあるじゃないですか。大学入試。世界でも有名です(笑)。あそこを通過すると、みんなリラックスしちゃう。私もほっとしました。

(写真:栗原克己)
(写真:栗原克己)
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山口:そこで選抜が終わって、遊びほうけてしまう。

根岸:あれは惜しい。ノーベル賞受賞者を国籍別に見ると、アメリカ人が1/3以上を占めています。そんなにアメリカ人の頭がいいとは思えません。つまり、そうした能力を引き出すシステムができているとしか考えられないですね。

日本の大学は一流企業を見習え

山口:長くアメリカの大学にいて、例えば「個の力」を引き出すシステムをどんなところに見いだされますか。

根岸:日本との一番大きな違いは、テニュアシステムの存在でしょうね。審査は厳しいので、テニュアを取れない人はかなりいます。テニュアを取れても、その後は伸びずに実績を出せない人もかなりいます。すると昇給しなくなるわけです。研究職に関しては妥協が少なく厳しいですね。その点、やっぱり日本は楽です。しかし、それでは「個の力」を引き出せません。

 テニュアシステム 一定期間採用した教員の任期中の業績を審査して、合格者に雇用保障(終身雇用)を与える制度。

山口:大学に比べて日本の企業はいかがでしょうか。

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