根岸:幼い頃、いろいろなことに妙な関心を持っていましたね。今でも覚えていることがあります。満州にいた5、6歳の頃、私はギョーザが好きで、よく中華料理店に行ったんですよ。その厨房で、料理人がラーメンの麺を作っていたんです。その麺作りが面白かった。私はずっと見ていました。日本の場合は広げた生地を包丁で切りますね。満州ではこねた生地をたたきながら伸ばしていた。

山口栄一氏
山口栄一(やまぐち・えいいち)
京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授。1955年福岡市生まれ。専門はイノベーション理論・物性物理学。1977年東京大学理学部物理学科卒業。1979年同大学院理学系研究科物理学専攻修士修了、理学博士(東京大学)。米ノートルダム大学客員研究員、NTT基礎研究所主幹研究員、フランスIMRA Europe招聘研究員、21世紀政策研究所研究主幹、同志社大学大学院教授、英ケンブリッジ大学クレアホール客員フェローなどを経て、2014年より現職。著書多数。(写真:栗原克己)

山口:そうめん作りみたいな感じでしょうか。

根岸:はい、そうなんです。伸びたら、それを2つに折って、また伸ばす。どこがすごいと思ったのかというと、さっきまで確か1本だったのに、うっかりよそ見しているうちに100本以上になっている(笑)。あと3回も繰り返せば1000本の麺ができちゃうんですね。

山口:倍々ですからね。

根岸:不思議だな、と。その中華料理店に行ったときは、ギョーザを食べるよりも、それをずっと見ているのが好きでした。後から振り返って考えてみると、何か変わった小僧ですね。でも明らかにあのときに私は2のべき乗を学んだ(笑)。

頭の良さと創造性

山口:科学あるいは学問について日本人の特性をどうご覧になりますか。

根岸:極端に言えば日本人は頭が良い。だけどクリエーティビティーの点でね。

山口:そこは大事ですね。クリエーティビティーが少ない?

根岸:少ないとは言い切れないと思いますけど、でもやっぱり「右へ倣え」をさせられる集団かもしれません。

山口:それはどういうところでお感じになりますか。

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