山口栄一氏
山口栄一(やまぐち・えいいち)
京都大学大学院総合生存学館(思修館)教授。1955年福岡市生まれ。専門はイノベーション理論・物性物理学。1977年東京大学理学部物理学科卒業。1979年同大学院理学系研究科物理学専攻修士修了、理学博士(東京大学)。米ノートルダム大学客員研究員、NTT基礎研究所主幹研究員、フランスIMRA Europe招聘研究員、21世紀政策研究所研究主幹、同志社大学大学院教授、英ケンブリッジ大学クレアホール客員フェローなどを経て、2014年より現職。著書多数。(写真:上野英和)

山口:1年のうち364日が実験。私は「ブルドーザーみたいに」と表現しましたが、皆さんそうおっしゃっていますね。

天野:別にそんなにガリガリやっているつもりはなくて、楽しかったです。

山口:でも毎回、真っ白いゴツゴツの窒化ガリウムがずっとできる。要するに改善されないわけでしょう。

天野:ところが、例えば原料ガスの流量を変えると、その1つひとつの結晶形が変わったり、あるいは不純物ドーピングも、亜鉛を入れたらすごくきれいな紫色から青色に色が変わったりと、いろいろ変えられるのを見るのは楽しかったですね。

山口:結局、何の成果も得られないまま、惨憺たる思いで修士論文を出すんですね。

天野:確かに修士論文は15ページぐらいしか書けず、出したのが2月ぐらい。就職が決まった同級生は卒業旅行で海外です。私は残って実験をずっとしていました(笑)。

切羽詰まって突き抜けた

山口:バッファー層を導入してみようと思ったきっかけは何ですか。

天野:きっかけは当時、助教授だった澤木宣彦先生から伺った話です。以前、名古屋大学で助教授をされていた西永頌先生(東京大学名誉教授)がシリコン基板の上にリン化ホウ素を成長させるとき、「直接ではなく、最初にリンを少し先流しすると表面がきれいになるよ」と話されていたと聞いたのです。それで低温で窒化アルミニウムをバッファー層として付けてみようと思って。だから決してひらめきとかじゃなくて、皆さんに教えていただいたことを応用したというか、少し使わせていただいたんですね。