独ボッシュは、コネクテッドカー市場が今後5年で年率25%近い成長を遂げると予測する。車載エレクトロニクス事業を統括するクラウス・メーダー氏に、動向や開発戦略を聞いた。
(聞き手は久米秀尚=日経Automotive)
コネクテッドカー(つながるクルマ)が増える理由は。
メーダー:自動運転や電動化もあいまって、車に載せるべきIT技術が格段に増えている。現在、車両の製造コストに占めるエレクトロニクス部品・技術の割合は30%ほど。2030年には50%に増えると見ている。中でもコネクテッドカーへの関心は高い。理由の一つは、消費者がスマートフォンで慣れ親しんだ体験をクルマにも持ち込みたいと考えていることだ。例えば、カーナビの地図が自動更新されないのは不満に直結する。

独Bosch(ボッシュ)President of Automotive Electronics Division 1962年生まれ。ダルムシュタット工科大学で電気工学学士を取得後、1987年にBosch社入社。2005年にシャシーシステム・コントロール事業部の副事業部長に就任した。2011年にオートモーティブ・エレクトロニクス事業部の副事業部長となり、技術部門を統括。2012年から現職。
自動車メーカーの中には、ソフトウエアの遠隔更新機能(OTA:over the air)の搭載率を今後数年で100%にする計画を打ち出しているところもある。OTAではセキュリティーの確保が必須で、その役割を担うのが「ゲートウエイ」だ。外部と車内ネットワーク「CAN(Controller Area Network)」をまたぐ通信の間に設けて防御壁となる。
ゲートウエイは防御壁に加えて、多数の車載ECU(電子制御ユニット)間の通信を交通整理する役割も担う。
メーダー:当社は2016年にゲートウエイの量産を始めた。まだ普及率は低いが、複数の自動車メーカーに供給している。同年の生産量は600万台だったが、この数は2018年には2000万台を超える見通しだ。
第1世代品は車外との無線通信には対応していない。第2世代はコネクテッドカーで使えるようにする。OTAを可能にした「Connected Gateway」を、2017年後半から2018年にかけて投入する予定だ。
そして、2022年頃の実用化を目指す第3世代品は「Vehicle Computer(VC)」と呼んでおり、演算処理能力を大幅に高める。自動運転を統合制御する車載コンピューターとして進化させる。自動運転の人工知能(AI)もここに搭載し、OTAで更新していく。
VCの導入は、クルマの電気/電子(E/E)アーキテクチャーに大きな変化をもたらす。増え続けてきた車載ECUの数が減少に転じるだろう。VCがクルマの頭脳となり、末端のECUの役割が減るのが一因である。E/Eアーキテクチャーを整理・再構築し、ワイヤーハーネスの質量を15~20%削減できると試算した。10キログラム以上の軽量化につながる。
【2017年4月18日開催】
~部品メーカーが考える自動運転の将来と2017年の展望~
日程 : 2017年4月18日(火)10:30~17:00
会場 : JA共済ビル カンファレンスホール (東京・千代田区)
主催 : 日経ビジネス/日経Automotive
Powered by リゾーム?