歩行者の認識にはカメラが必須――。こうした常識が崩れた。独フォルクスワーゲン(VW)は、新型SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)「ティグアン」にミリ波レーダーだけで機能する歩行者検知システムを搭載した(図1)。
カメラ不要のこの機能は独アウディの新型「A3」にも展開。VWグループの普及価格帯の車両への採用が加速しそうだ。
歩行者の認識はこれまで、カメラの専売特許とされてきた。形状的な特徴を判断しやすいためだ。実際、トヨタ自動車をはじめ、VWグループ以外の自動車メーカーは皆、カメラに歩行者検知を任せている。ミリ波レーダーは、反射波の時間差や強度などから距離や相対速度を計算し、どんな物体かを認識する。車両の認識は得意だが、反射波が小さい人の認識は難易度が高い。
トヨタの自動ブレーキ「Toyota SafetySense P」はカメラとミリ波レーダーを使う。両方の情報を組み合わせて歩行者を検知するが、ミリ波レーダーの情報はあくまで補助である。VWのセダン「パサート」でも歩行者検知の機能は実現していたが、カメラとミリ波レーダーを併用していた。
ミリ波レーダーだけで歩行者を検知可能としたのは、VWではティグアンが初めて。同車の歩行者検知システムは、ミリ波レーダーで歩行者を検知すると運転者に警告を出す。それでも運転者が回避行動を取らずに衝突の危険性が高まると、自動でブレーキをかけて危険を回避・軽減する。
ミリ波レーダーは、フロントグリル中央の「VWマーク」の裏に内蔵している。アウディのA3はナンバープレート下に配置した。ミリ波レーダーは独コンチネンタル社製の「ARS410」を採用した。76GHz帯(76G~77GHz)の品種だ。車線維持機能などに必要な白線の検知には、オプションの単眼カメラが必要になる。
低コストで“五つ星”を
そもそも、歩行者を対象とした自動ブレーキへの対応は、自動車アセスメントが大きく影響している。欧州の「EuroNCAP」や日本の「JNCAP」が、2016年から歩行者検知に対応した自動ブレーキを評価に加えているのだ。いかに低コストで“五つ星”の高評価を獲得するか。VWグループが出した答えが、ミリ波レーダーのみで歩行者検知を実現させることだった。
ティグアンとA3はいずれも、VWグループの主力プラットフォーム「MQB(横置きエンジン車用モジュールマトリックス)」の適用車。MQBは同グループのスペインのセアト社やチェコのシュコダ社にも展開される。このため、ミリ波レーダーによる歩行者検知システムは今後さらに採用が増えそうだ。
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