顧客名簿には名だたる大物スターの名前が

 米カリフォルニア州、ロサンゼルス、ここに世界的に最も注目を集める案件を数多く抱える弁護士事務所がある。

 顧客の名簿をのぞいてみると、ジェニファー・ロペス、アシュトン・カッチャー、スティーヴィー・ワンダー、ブリトニー・スピアーズ…。名だたる米大物スターの名前がずらりと並ぶ。ワッサー、クーパーマン&マンデルズは、ハリウッドスター御用達の離婚に関わる問題を扱う法律事務所だ。

 同事務所は1981年に著名な米女子テニス選手ビリー・ジーン・キングが、恋人の女性から慰謝料を請求された件の弁護を担当して有名になった。同性愛が今ほど当たり前のものとして語られなかった時代に、交際していた同性から有名人が訴えられるというエピソードはメディアの関心を引き、この一件に関わる中で同法律事務所も世に知られることとなった。以来、有名人から弁護の依頼は後を絶たない。

 「スティーヴン・スピルバーグ、クリント・イーストウッド…、トム・クルーズは2回、私が離婚の弁護をした。最後の奥さんの名前は何だっけ」。

 こう語るのは同事務所の設立者でCEOのデニス・ワッサーだ。ここに弁護を頼むと、依頼料は2万5000ドル(約285万円)。そこから先はひたすら時給計算で、デニスは1時間あたり900ドル(約10万3000円)を請求する。

家族法の弁護士、デニス・ワッサー

デニス・ワッサー氏
ハリウッドで1980年代から活躍している離婚弁護士。トム・クルーズほかを顧客に持つ。

 デニス自身も離婚の経験者だ。彼が別れた最初の妻との間にできた娘、ローラ・ワッサーは、今この事務所でエース離婚弁護士として活躍している。ローラもやはり離婚の経験者である。

 最近ローラはジョニー・デップの弁護を終え、現在アンジェリーナ・ジョリーの弁護にあたっている。この有名女優は以前にも離婚の経験があり、ローラが彼女の弁護を担当するのはこれで2回目だ。ローラに弁護を依頼すると、2万5000ドル(約285万円)の依頼料に加え、時給は850ドル(約9万7000円)、こちらもかなり高額だ。

 超有名人の顧客を数多く抱えるローラには、様々なメディア対策戦術がある。

 たとえば、金曜日の夕方に裁判所に離婚届けを提出することで、週末を挟んでメディアの報道が遅れるという古典的なテクニックはもちろん、複数の案件を同時に裁判所に提出することで、報道を攪乱させるなどの戦法もある。「有名人はパブリシティーが命だ、いかに手際よく顧客の名声を傷つけずに離婚させることができるか、能力が問われる」。父デニスはこう語りつつ、メディアに写る娘の姿を誇らしそうに眺める。