じつは、あの微粒子の解析によって、太陽系誕生の一端が見事なまでに解明されていたのだ。それも、100分の1mmの微粒子を100枚の薄切りにして解析するというという信じがたい方法で。

東北大学・中村智樹教授の図を山根が再構成し、『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』に収載した図。

 「はやぶさ」は何のために小惑星「イトカワ」へ向かったのか。
 それは、拙著『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』の副題が物語っている。

 「太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション」

 

 「はやぶさ2」の取材では、「はやぶさ2」の科学目的をプロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さん(名古屋大学教授)に聞き、それも紹介した。
 渡邊さんの専門は太陽系の成立の理論であり、「はやぶさ2」はその使命も担って打ち上げられたのだ。
 ちなみに「はやぶさ2」は現在、順調に宇宙大航海を続けており、来年の今頃、小惑星「リュウグウ」に到着する予定だ。

 2014年秋、「はやぶさ2」の本を書いたばかりの私の頭の中には、こうして「太陽系の誕生」というフレーズがもやもやと渦巻いていた。そこに、あの「アルマ」の太陽系そのままのような画像が飛び込んできたのだから、興奮が禁じ得なかったのである。

アンテナの位置を15kmに広げて観測

 平松さんがニュース・リリースに添えた1993年におうし座「HL星」を電波望遠鏡で観測した画像を提供した国立天文台長の林正彦さんは、かつて、野辺山宇宙電波観測所の電波望遠鏡(干渉計)5台を使い、「HL星」に惑星系円盤と確信できる部分の観測に成功していた。

 その林さんは、こう話してくれた。

 「私が24年前に観測した天体の真ん中には、原始惑星系円盤があるだろうと、誰もが想像していたんです。それが、円盤そのものだけでなく、惑星ができているとしか考えられない縞模様がいくつも見えたわけです。
 ピエール・コックス所長からの報告によれば、チャレンジングな試みとして『アルマ』の各アンテナの位置を15kmに広げて観測した結果だとのことでした。
 報告には絵が3つ添付されていて、最初の2つはアンテナ(干渉計)の観測環境などを描いたものに過ぎなかったんですが、3つ目の絵があの円盤で、説明におうし座『HL星』とあったので、24年前に私が見たあの天体だとすぐにわかりました。
 それが、『アルマ』でついに見えたんだ、と驚きました」

 まさに、真実は想像より奇なり!だった。

1993年、林正彦さんが発表した電波望遠鏡で観測したおうし座「HL星」。「アルマ」は1993年に比べてその中心部を140倍の解像度で鮮明にとらえた。画像・国立天文台、ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)