「アルマ」のニュース・リリースの作成は平松さんが担当なので、早速、その準備にかかった。
 「アルマ」が観測を開始して以来、もっとも強烈なインパクトを持つ成果であるため、よりよいニュース・リリースを作るために、アメリカ国立電波天文台(NRO)、ヨーロッパ南天天文台(ESO)、そしてチリの合同アルマ観測所(JAO)の各広報担当と頻繁にメールのやり取りや電話会議を続け、テキスト校正、そして画像を補正する仕上げに取り組んだ。

興奮できるニュース・リリース

 この画像がいかに画期的なものかを伝えるため、過去のおうし座「HL星」の観測と比較する図を作りたいと考え、過去の「HL星」の論文をいくつも探し調べたところ、現・国立天文台長、林正彦さんの論文を発見。
 林さんからはすぐにその元画像とニュース・リリースに入れるためのコメントが寄せられた。

 「実は、発表は当初の予定より数日遅れました。画像処理をやり直し、よりきれいにする作業などをぎりぎりまで続けた結果です。
 ニュース・リリースのウェブページを準備し『公開』ボタンを押す時には、マウスをクリックする指が緊張と興奮で震えていました。こんなことは、それまでのプレス・リリースでは経験がありませんでした。
 このプレス・リリースを出すまでには結構消耗しましたが、これほど興奮できるニュース・リリースにまた出会いたいです」

2014年11月6日公開されたニュース・リリース。当時の国立天文台ホームページから。

 プレス・リリースを公開した直後、「元のデータを持っていないか」と、惑星形成の研究者が平松さんを訪ねてきた。当初のニュース・リリース画像にはスケールを入れていなかったため、円盤のサイズが気になったのだという。
 国立天文台の副台長、渡部潤一さん(国立天文台教授)は、スケールの入っていない画像に定規を当てて溝の間隔を測り、共鳴が起きているかどうか確かめたという。
 平松さんは、そういう数々の反響を知り、「アルマ」の画像1枚が惑星形成分野にもたらした大きな衝撃をまざまざと感じたという。

 私も、ニュース・リリースを見て衝撃を受けた一人だが、その公開日は、小惑星探査機「はやぶさ2」の取材・執筆を終え、本の発売を8日後に控えていた時だった(『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』講談社・ブルーバックス刊)。

 2014年12月の「はやぶさ2」の打ち上げを目前にしてまとめたノンフィクションだが、この本では、「はやぶさ」が持ち帰った小惑星「イトカワ」の微粒子の分析から何がわかったのかにも大きなページを割いていた。

 「はやぶさ」は大きな話題になり、拙著『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(改訂版は講談社+α文庫刊)は東映で映画化されたが(渡辺謙主演)、肝心の地球に持ち帰った微粒子の分析については映画でも描かれず、まったくといっていいほど報道されていなかった。
 そこで、「はやぶさ」のカプセル開封という劇的な仕事を担当し、「カプセル」内に発見した微粒子の解析に取り組んだ東北大学教授の中村智樹さんらの仕事、取り組みを書いたのである。