若い世代が知らない「トトカルチョ」の変遷
toto 楽しく予想して、最高5億円。
これは、Jリーグのサッカー試合の結果を予想する「適法」の「くじ」のキャッチフレーズで、「toto」は「トトカルチョ」の短縮形だ。この賭博の胴元は、独立行政法人日本スポーツ振興センター(お騒がせ続きの文部科学省の所管)。
トトカルチョ〔名〕({イタリア}totocalcio )
プロサッカー試合の勝敗を予想して行なう賭博。1922年イギリスに始まり、イタリア、スウェーデンなどで公認されている。転じて、一般に、物事の勝敗などを予想して行なう賭け事にもいう。(『日本国語大辞典』小学館)
「トトカルチョ」は、いくつかの国語辞典や現代用語の事典でも、ヨーロッパ由来の公認の賭博であるという説明しかない。だが、オールド世代は、「トトカルチョ」がヤクザなどの資金稼ぎの闇商売=賭博を意味していたことを覚えている。違法行為を指す言葉が、適法行為を意味する言葉になったのである。
かつて「違法行為」とされたのは、もったいぶった言い方をすれば、それが健全な市民生活を脅かす危険があり、かつ暴力団などの資金源を断つためだった。
このように、時代を物語る言葉は、時代によって変質、あるいは意図的に改変されることがあり、ある社会現象をきちんと見据えてとられるためには、「今」と「過去のケース」を比較検討する必要がある。
だが、「違法」トトカルチョの時代について調べようとしても、ネット検索では古い情報はまず見つからない。かつ、こういう下世話な事象は新聞記事検索でもなかなか出てこない。一方、過去に発行された雑誌記事にはそれがある可能性が大きい。といって膨大な量の過去の雑誌の中から目指す記事を探し出すのはきわめて難しい。しかし、望む雑誌記事が検索できるスゴイ方法があるのだ。
甲子園選抜高校野球 やはり当る「トトカルチョ」
(週刊新潮・1981年04月09日)
名門校のトトカルチョで騒いだのは誰だ!?
湘南高校・野球トトカルチョ
(週刊プレイボーイ・1988年11月22日)
朝日新聞販売店グループが「高校野球トトカルチョ」を開帳 参加人数80名超 br>夏の甲子園"主催社"が犯した賭博行為を示す『投票用紙』『オッズ表』を入手
(FLASH・2002年09月10日)
この3件の「違法」トトカルチョとおぼしき「犯罪」を報じた雑誌記事を自宅にいながらパソコンで探し出せたのは、大宅壮一(おおやそういち)文庫のホームページにある雑誌記事索引検索(Web OYA-Bunko)のおかげだった。



収蔵している明治時代から現在まで、約1万種類の雑誌、およそ78万冊から作成したこのデータベースの記事索引はじつに520万件にのぼる。しかも、検索しヒットした記事全文を読みたければ、図書館と同じようにそのコピーを請求、会員になると自宅や職場までファックスで送ってもらうこともできるのだ。もちろん、Googleのようにタダではなく、有償だが。


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