新元素の名称公開の翌日、その森田さんから嬉しいメールが届いた。

山根さま

森田浩介です。
お世話になります。

以前山根さんに書いていただいた記事には、私の熱さ(暑さ)と山根さんの熱さが共鳴したような気にさせられ、大変うれしかったです。
ありがとうございます。

3月にIUPACに提案しておりました、我々の思いを込めた元素名「ニホ二ウム」をやっと口に出していうことができることに喜びを感じると共に、ほっとした気持ちもしております。

真摯に自然に向き合い基礎科学の研究を行う中で、時として一般の方にもわかりやすい形の成果を出せることは大きな喜びです。

このような活動を通じて、科学に対する国民の皆様の信頼性が得られますならば、大変うれしく思います。

森田浩介

 森田さんが「熱さが共鳴したような」と表現してくれた記事とは、ここ、「日経ビジネスONLINE」で2012年10月、そして2013年3月に書いた報告を指す。

 2012年10月23日(火)
 113番目の元素を創り出した壮絶な日々(その1)

 2013年3月6日(水)
 科学界の悲願「113番元素」の合成に成功!(続報)
 その快挙に学ぶ科学とモノづくりの「日本力」

 「113番元素=ニホ二ウム」については、テレビなどでも繰り返し報道されてはいるが、その詳細はほとんど伝えられていないので、ぜひ、あらためてお読みいただきたいと思う。

スクープ合戦、そして「元素」とは?

 この熱いドラマのエピローグは、2015年12月31日に始まった。
 「113番目元素」に対して日本に命名権が与えられたという発表があったのだ。

 あれから半年、6月8日は、待ちに待った日だった。
 22時30分頃、日本が提唱した名称と略記号がIUPAC(国際純正・応用化学連合)のウェブサイトで発表されると伝えられていた。

2016年6月8日、午後10半頃、国際純正・応用化学連合(IUPAC)のウェブサイトに日本が命名した「113番元素」の名「ニホニウム」が、115、117、118番元素とともに並んだ。
2016年6月8日、午後10半頃、国際純正・応用化学連合(IUPAC)のウェブサイトに日本が命名した「113番元素」の名「ニホニウム」が、115、117、118番元素とともに並んだ。

 わくわくする思いでその瞬間を待っていたのだが、何と夕方頃から、「スクープです」と、その名称が「ニホニウム(Nihonium)」であり、略記号が「Nh」であるという報道が続いた。ちょっと待って、それって、ミステリー小説を読んでいる途中で真犯人を教えちゃったようなことではないの?
 宝箱の蓋が開く瞬間を心待ちにしていたのは、科学者ばかりではなかったと思うが、その楽しみが、わずか数時間早いだけのことに何の意味があるのか理解し難い「スクープ」によって奪われてしまったのには、がっかりした。
 もっとも各メディアが基礎中の基礎である純粋科学に関する発表について、「スクープ」に鎬を削ったのは、科学立国ニッポンにふさわしい現象ではあったが。

同ウェブでは日本による「113番元素」の命名について、「Nihonium」は「日出ずる国・ニホン」に由来すると説明。また、これによって福島第一原発の原子力災害で失った科学への誇りと自信を取り戻してほしいという意味のメッセージも記されていた。
同ウェブでは日本による「113番元素」の命名について、「Nihonium」は「日出ずる国・ニホン」に由来すると説明。また、これによって福島第一原発の原子力災害で失った科学への誇りと自信を取り戻してほしいという意味のメッセージも記されていた。
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 という「113番目の元素」だが、理科に疎い多くの人たちが、「それ、何? どんなこと?」という思いを抱いたようだ。物語の詳細は、2012年10月23日と2013年3月6日の報告を読んでいただくとして、ここで、簡単なおさらいをしておこうと思う。

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