オーナーと駐車場利用者のニーズが合致することはわかった。あとは価格設定だ。川村氏は周辺の相場を見ながら、例えば空いている20台分の駐車場を1台2万円で借り受けたら、それを3万5000円で貸し出した。これならじゅうぶんに利益が出る。

「すみません、そちら、ヤクザですか?」

 問題は行儀の良い客だけにどう絞り込むか。言葉を変えれば、筋の良くない客をどう排除するかだ。

 「それも一軒一軒、聞き回りましたよ。『すみませんが、そちらはヤクザではないですよね』『準構成員でもお貸しできないんですが』と質問をぶつけてみるんです。答えてくれるかって? 普通の人だったら『違いますよ』と即、言いますよね。でもヤクザの場合、『うーん、うちはヤクザかな。難しいな』とか『オジキがそういう商売かも…』みたいな話になるので、わかるんですよ」

 しらみつぶしに尋ねた結果は地図にプロットして情報を集約。万が一、知らずにヤクザが関連する会社と契約し、後でそれが判明した場合には即、解約を申し出た。トラブルもあったというが、一度つけこまれてしまうとズルズルになる。特別対応をすることなくNPDはヤクザ排除を徹底した。

 「駐車場ビジネスは当時、汚れたイメージが強かったので、清潔感を大事にしました。ベンチャーでお金もなくてね。警察OBも雇えないから正直大変でしたよ。難癖をつけられて、事務所で数時間にもわたり土下座を強いられたこともあります。でも、上場して、警察OBのコンサルを採用したらヤクザ絡みのトラブルはなくなった。トヨタさんに奇跡的に出資してもらったのも大きかったですね。出資者に名前が入ってからヤクザがこなくなりましたから(笑)」

 トヨタ自動車本体がグループ企業以外で出資している例は、極めて少ない。それだけトヨタがNPDの将来を買っていた表れだが、それをヤクザも知っていたのか、世界一の車メーカーの名前に恐れをなしたのか。ともあれ、トヨタ効果はNPDの成長を後押しした。

 川村氏は、客筋を良くするだけでなく、ハードにも力を入れている。

 死亡事故が何度も起きている立体駐車場の仕組みを見直し、センサーをつけて「死亡事故のない駐車場」を率先して実現してきたのはNPDだ。いまでは立体駐車場の安全確率は99.9%。ヤクザを締め出すのも、機械を整備して安全を確保するのも、目的は同じ。駐車場ビジネスを清潔で安心、かつしっかりと収益があがる仕組みに変えていくためだ。 

 そのポリシーはタイでの事業にも貫かれている。

 タイでは駐車場料金の精算はほとんど機械化されていない。機械より人を使った方が安いと考えられているからだが、仮に24時間3シフトで3人の従業員が必要なところにオートペイ(事前精算機)を入れれば、3人分のコストが浮く。これは大きい。まずは実績を作ろうと、川村氏はNPDのオフィスが入っているラマランドビルから出入口の自動無人化を試みた。

黄色いボックスが事前精算機のオートペイ。導入で人件費は大きく浮く。現在、4カ所のビル駐車場に設置している。

 「各フロアに2人の警備員がいたんですが、何かあったら困るという理由で雇われていただけで、勤務時間中、ほとんど寝ているか博打をしているかでした。おまけに、このビルの駐車場に車を止めているタニヤのお姉ちゃんが『警備員が怖い』というしね。でもオートペイなら、警備員のようにポケットに小銭を入れることもない(笑)。計算ミスもなく、24時間365日働き続けてくれます」