NPDタイランドが最初に駐車場の運営を手がけたラマランドビルとチャーンイサラビルは、このエリアのすぐ近くにある。カラオケクラブで働く女性たちが車を持っていれば、夜間にがら空きになる2つのオフィスビルの駐車場を利用してもらえるのではないか?

 その読みは当たっていた。

 「タニヤとパッポンのお店をすべて回り、お店で働く女性1800人にアンケートに答えてもらいました。ホステスさんからチーママまで、それこそ全員です。車の所有の有無、住所、店を書いてもらうと、360人が車を持っていることがわかった。そこで、この360人に直接会いに行ったんですよ。3カ月かかったかな。残念ながら伝説のホステスと呼ばれる10人は超売れっ子で会えずじまいでしたが(笑)、ほかの350人にはみな会って、尋ねてみました。『夕方5時~朝の7時まで、いくらぐらいだったら駐車場を利用したい?』ってね」

 彼女たちの希望は1日60~80バーツ(約200円~260円)。だが、川村氏はあえて価格を30バーツ(約100円)に設定(現在は60バーツ)。彼女たちが喜んで利用したことは言うまでもない。「NPDすごいよ」(タニヤで働く女性はそこそこ日本語ができる)と噂が口コミで広がり、利用者は200人におよんだ。利用者ゼロの時間帯に丸々利益がオンした格好だ。

(なお、車で来ている女性たちは、基本、お店でお客にお酒を飲ませても自分では飲まない。飲んだ場合は酔いが抜けた朝に車を取りに来る。そのために夕方5時から朝7時までの固定料金を用意しているのだ)

NPDタイランドのオフィスも入居するラマランドビル。この駐車場の夜間のヘビーユーザーがタニヤで働く女性たち。

 電車通勤はまっぴらごめんだし、ガラが悪い運転手が多いタクシーも夜間にはあまり使いたくない。できれば車で通いたい。でも車を停める場所がないのでタクシーを使うしかない。そう諦めていた彼女たちのニーズを川村氏はコツコツと掘り起こした。約束を破られることも多かっただろうに、1人ひとりに直接会って丁寧にリサーチしようとする意志と行動力には平伏するしかない。

 「いや、僕は地道な営業が得意なんですよ。ひとりまたひとりと、お客さんが増えていくのが大好きでして」

 川村氏が言う「地道な営業」。それは、NPDの創世記から培われている。舞台をバンコクから大阪に移し、時計の針も少し戻そう。

タイの事業のベースに大阪での経験あり

 NPDはいまでこそ新丸ビルのような巨大オフィスビルやホテル、百貨店、商業施設など約1000件の駐車場を運営する東証1部上場企業だが、91年に代表取締役社長の巽一久氏が設立した頃は社員3人の小さなベンチャー。川村氏が99年に入社した当時も、「駐車場は儲からないビジネス」とされていた。

 「オフィスビルも商業ビルもとりあえず条例があるので駐車場は作るけれど、それで儲けようという発想がなく、可哀想な商材でした。でも、困っている人はたくさんいた。当時、ビルの駐車場はそのビルのテナントしか使えないところばかりだったので、どんなにその駐車場がガラガラでも、周囲のビルの利用者は月極を借りるしかない。僕たちはこうしたミスマッチを解消してきたんです」

 ミスマッチ解消の武器となったのが相対での営業活動だ。

 99年に入社した川村氏は、大阪中心部の法人300社をピックアップし、ビルオーナーに「空いている駐車場をうちに貸してくれませんか。行儀の良い客を集めて貸しますから」と説得。ビルの半径300m以内、徒歩5分の距離にあるビルの上から下まで回っては、「駐車場が近くにあれば、いくらだったら借りたいですか」と尋ねまくった。

  結果は上々。オーナーからは「借りてくれればありがたい」、近くのビルの利用者からは「近くの駐車場を借りられるなら助かります」という声が殺到した。これは、タニヤパッポンでの取り組みそのものだ。