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 ブームの有無や大小にかかわらず、自分が作ったミニ四駆やRCカーの性能を試し、他人にも見てもらえる機会が定期的にあることで、ファンのモチベーションは上がり、「自分もあの場に参加したい」と意欲を燃やす新規客を生む。世界トップレベルの戦いを目にすれば、より高いレベルを目指そうとするヘビーユーザーが増える。ブームに翻弄され続けてきたサイアムタミヤが選んだ道はシンプルではあるが、自社製品の魅力を伝えるにはもっとも効果的かつ持続的な方法だ。

田宮俊作氏のサイン会に列を成すまでに

 2018年10月には、バンコク郊外に位置するショッピングモール・シアランシットに、従来の店舗とは異なる「タミヤプラモデルファクトリー」を出店した。

アジア最大級のRCカーのイベントTITCはバンコクで開催されている。優勝者にトロフィーを授与しているのがサイアムタミヤ代表の鈴木格氏。

 「それまで2つの直営店を出していましたが、1つは本社の下にある店舗で、もうひとつは日本人が多いタニヤ地区にある店。目的買いのお客様が多く、2店とも決して人通りが多いとはいえない場所にあります。対して、今度の新店はタイ人のファミリー客が大挙して来店する商業施設の中。売り場内にはサーキットも設けました。売れゆきは好調ですね。どの商品もよく売れている。バンコク市内にこのシアランシットのような店をあと1店は開く計画です」

 シアランシット店のオープニングには、日本からタミヤ本社会長兼社長・田宮俊作氏が訪れた。「田宮氏来店」の告知にたくさんのファンがかけつけ、店舗ではサイン会まで開かれている。「タミヤ」の熱烈なファンが増え、ブランドがタイに浸透してきた証拠だろう。

新店のオープンには「Mr.タミヤ」ことタミヤ会長兼社長の田宮俊作氏が来店。ファンが駆けつけサイン会は大いに盛り上がった。

 プラモデル文化も育ちつつある。現在、サイアムタミヤの売り上げはミニ四駆が40%、RCカーが20%、プラモデルが20%。プラモデルの売上高がRCカーに追いついてきた。

 「年々、着実に増えてきました。人気が高いのは戦闘機で、日本と同じですね。毎年11月にプラモデルコンテストを開いていますが、こちらの応募数も伸びています。もともとタイ人は手先が器用で細かい作業が得意。今後に期待できますね(笑)」

年に1回開催されているホビーモデルコンテストの応募作品。人気が高いのは戦闘機や戦車部門だ。
ホビーモデルコンテストの授賞式。回を重ねるごとに応募作品が増え、レベルもアップしている。
プラモデル文化がなかったタイでプラモデルのファンが着実に増え、売上高もRCカーに並ぶまでに成長した。

 女性ファン、親子二代のファンも増えてきた。家族で来店し、1日の大半をタミヤの店で過ごすというケースも珍しくない。幅広い層でファンが育ってきているのは、タイ人の所得が上がり、レジャーや趣味にお金をかけるようになったから、だけではない。目先の数字にとらわれず、堪えて堪えてイベントを続けてきたからだ。

 「走らせてこそのミニ四駆でありRCカーですから」と鈴木氏。製品の魅力を伝える場を作る、販路を絞る、効率を考える。これらを堪え性のある経営で「走らせてきた」サイアムタミヤはタミヤのグローバル戦略の頼もしいパートナーだ。