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 親子2人は市場開拓の切り札として小型の動力が付いたミニ四駆に狙いを定めた。
 格氏は振り返る。

 「当時、日本では『コロコロコミック』で連載されていたマンガ『ダッシュ!四駆郎』が大変な人気を集め、ミニ四駆がよく売れていました。タイでは日本のマンガの影響力が非常に高い。日本で流行ったものはタイでも必ず売れるはずだと考えたんです」

 しかし、ただミニ四駆を売り場に並べるだけでは成功は望めない。それは、サイアムタミヤ以前の時代の失敗からも明らかだ。プラモデル文化がないタイでは、商品を見て手に取れるだけではなく、動力のついたミニ四駆の楽しさ・面白さを体感できる場が欠かせない。

 そこでサイアムタミヤはバンコク中心部のショッピングモールやジャスコ(当時)の軒先を借り、週替りでミニ四駆大会を開催した。

ミニ四駆の特設サーキット。自作の車を走らせ性能を競う貴重な場をファンに提供している。

イベントが大当たりして大ヒット、しかし……

 参加費用は無料。豊富に揃ったボディやシャーシ、グレードアップパーツなどを使って各自が思い思いに組み立てたミニ四駆を走らせ、いかに早くコースアウトせずにゴールできるかを競う場だ。コースで一度に走れるミニ四駆は3台~5台。優勝者が決まるまでレースを行い、勝者にはトロフィーやタミヤ製品を贈呈する試みにバンコクの子どもたちは夢中になる。

 ミニ四駆の価格は198バーツ。安くはないが手に入らない価格でもない。改造し性能をあげていく楽しさはタイでも受け入れられ、気がつけばミニ四駆ブームがタイを席巻していた。

 熱狂は数字となって現れた。売り上げは急増。爆発的な大ヒットといってよかった。
 だが、ブームが牽引した人気はもろかった。

 「人気が高かったのも2年程度。熱狂的だったミニ四駆ブームも気がつけば収束し、売り上げも大幅にダウンして、ピーク時の半分程度にまで落ちこんでしまいました」(鈴木格氏)