スタジオで実施した「東北フードアンドテイスティングイベント」での一コマ。東北の食材や日本酒の試食会でタイ人の志向を探った。

 あるときには食に関するマーケティングリサーチの舞台として、あるときには企業のチームビルディング用ワークショップとして、またあるときには輸出振興の情報獲得の場として、企業や自治体からのスタジオ利用が相次いでいるのだ。

 たとえば、宮城県三陸の食材を使った1dayレッスン、福岡のイチゴ・あまおうを取り入れたケーキコース、イクラやネギ、トマトなど東北産の食材を使った料理の試食会。クッキングスタジオでは各社各様のイベントやレシピ開発が進行中だ。

 「スタジオを使えば、タイ人の先生の声も聞けますし、イベント前のリサーチから始まって、消費者となるタイ人のリアルな声を集めることができます。

 いま、タイの市場を開拓しようとたくさんの日本の食品メーカーや自治体が出てきていますが、ピント外れの攻略法も少なくありません。日本食がタイで人気だからうちの食材も売れるだろうと漠然と考えている企業も多いという話を聞きます。『どうしてもこの製品を受け入れてもらいたい』とか『なんとしてでもタイの市場にこの食材を浸透させたい』という一方的な思いが強すぎる。正直、受け入れる側のタイ人の志向やニーズを全然考えていない(笑)。でも、現地化すべきところは現地化しないと、なんとなくではまったく通用しません」

 日本食ブームに沸くタイに出れば成功は間違いないという根拠なき確信は、ポテンシャルのある食材の普及を逆に阻害してしまう。その好例(?)がスーパーマーケットにおける日本の調味料の陳列場所だろう。

チームビルディングに料理を活用!

 味噌やマヨネーズなど日本の調味料の多くは、調味料コーナーではなく日本食コーナーに置かれている。

 「これでは、日本食に興味がない人には利用されません。タイ人の日常の食卓への登場する機会が限られてしまいます。醤油もそうですね。日本人は醤油をいろいろな料理に使っていますが、ほとんどのタイ人は刺し身につける以外の使い方を知らないんです」

 食材の使用頻度を上げるためにはどこに陳列すれば効果的なのか、どんな料理に使ってもらうべきなのか、どのようなレシピを新たに紹介すればいいのか。藤本氏は、ABCクッキングスタジオの戦略的活用を企業に働きかけている。

 チームビルディング(職場内のコミュニケーションの推進や人間関係の構築を図ること)としてのスタジオの利用も始まった。

 「料理を通じてチーム力を向上させるワークショップです。企業内のコミュニケーションというと、日本では飲み会に走りがちですが(笑)、中国ではグローバル企業だけでなく、ローカルも含めて多くの企業が利用に踏み切り、大ブレイクしました。タイでもすでに研修会社と組んで、大手のPTT(タイ最大の企業であるタイ石油公社)などが導入しています」

 限られた時間内で限られた材料を用い、各グループがそれぞれテーマを掲げて料理を作り発表する。料理を通じてチームワークやリーダーシップ、行動力を育成するワークショップは料理教室の新しい可能性かもしれない。