カラフルな3種類の形のアソートセット「バラエティバルーン」は、コンビニや玩具店の人気アイテムだ。

 「父がやりとりをしていた工場長が非常に熱心な方で、日本の技術や品質を学べば、今後は有利になると考え、こちらの要望にどんどん応えてくれました。品質にうるさい日本人を満足させれば世界のどこで戦っても勝てると考えていたようです」

 世界市場を見据えて日本企業と手を組み、スポンジのように技術を吸収していったタイの企業と、日本の消費者や流通の高い要求水準に応えられる製品をタイで実現させようと必死で指導した日本のモノづくり企業。互いの意図が合致し実を結んだ幸福なコラボレーションといえるだろう。

 国内市場を抑え、ビジネスモデルも盤石と思われた2009年。先代が病に倒れたことから急きょ社長に就任した斉藤氏は、しかし頭を抱えていた。

「この先30年、どうすれば……」

 「うちはずっと子ども中心にやってきた。でもこれからどんどん子どもは減っていく。当時、僕は34歳。収益源を確保しているとはいえ、この先30年、どうやって事業を推進していけばいいのか。そう考えるとお先真っ暗でした」

 容赦なく市場がシュリンクしていく中で、斉藤氏に風船の新たな可能性を教えてくれたのが「風船バレー」だ。

 通常より3倍厚く、中に鈴を入れた風船がお年寄りや障害者が安心して楽しめるバレー用のボールとして利用されている――。知人からそう知らされた斉藤氏は利用現場に足を運び、閃いた。

老人や障害者の施設で安心安全に楽しめるスポーツとして利用されている風船バレー。斉藤氏に風船の可能性を知らしめた。

 「その風船はうちの製品だったのですが、卸を通じて納品していたので、情報が届かなかったんですね。でも実際に利用されている光景を目にした瞬間に、これまで自分たちのお客さんではなかった人全員が風船のターゲットになると感じました。年齢、性別、国籍も一切関係ない。ただ、そういう風船がなかっただけ。大人も遊べるような風船を作り、新しい遊び方や使い方を知ってもらえば、風船の可能性は膨らむはずだと確信しました」

 先代が編み出したビジネスモデルで収益を出しつつ、余力のあるうちに新しい風船にチャレンジしようと決意した斉藤氏が、2011年から立ち上げたのがハンドメイドの風船ブランド「マルサバルーン」だ。