タイ人スタッフに日本語を学ぶ機会を提供している日系企業は少なくないが、TTETの日本語教育はソフトウエア開発に必要とされる語学力を効率的に向上させるための教育に特化し、しかも内製化している。

ソフトウェア技術者のための日本語教育を内製化し、独自の教材や教授法を作り、到達レベル目標を設けている。

 「業務で必要なのは要求仕様書を読んで理解し、メールを読み書きする能力と、技術仕様の打ち合わせをするときに必要な会話力ですが、この部分だけを外部に切り出すのは難しい。だったら会社の中に語学学校を作ってしまえと、先生を雇用し、カリキュラムも自分たちで作った。社内に技術翻訳をするチームがあるので、そこのデータベースから頻出単語を抽出し、開発に必要な日本語や言葉遣いを覚えてもらうことからスタートしました。日本語を教える先生にもソフト開発の勉強をしてもらっています」(楠本氏)

 「ちょんがけ」(エンジンをちょんと回すときの動作を指す言葉)といった、一般の日タイ辞書には絶対登場しないであろう特殊用語もカバーしたTTET独自の辞書は、プロジェクトが移り変わるごとに新しい単語が増え、どんどんバージョンアップ。いまでは顧客から「その辞書を買いたい」と依頼されることも多いそうだ。

 マネジメント層にも大なたを振るった。開発力を上げるため、品質や生産性管理部門については、大手日系エレクトロニクス企業から、タイミングよく業界に知見のあるベテランをヘッドハンティングして責任者に据え、開発や人材育成の責任者は駐在員から現地採用へと切り替えた。

結果は離職率にはっきりと出た

 「我々は真剣に組織を変えようとしているんだと本気度を見せるためです。弊社の最初の10年間は日本人の駐在員を中心に回していたが、それではいつまでたっても仕事は上から与えてもらい、事業戦略も上司や日本人が考えてくれるという発想から抜け出せない。もっと能動的に自分たちで仕事を作っていってもらうためには現地採用の活用が欠かせません」(伊藤氏)

 現在、TTETの社員は214人。うち駐在員2人をのぞき、残りはすべて現地採用だ。とりわけ興味深いのが、現地採用の日本人を大いに活用していることだろう。

 これまでの私の取材経験から言うと、「タイ人はダメだダメだ」と頭から決めつける企業に限って、現地採用の日本人を見下しがちだ。だが、TTETでは人事・総務の責任者である楠本氏を始め、現地採用された20人もの日本人が活躍している。3~5年の勤務で日本に戻っていく駐在員と違って、好んでタイに住み、タイで働き、タイ人と日本人をつなぐ存在である現地採用の人材重用は、「我々は真剣にタイ人と日本人のFusionを追求している」という明確な意志の表れだ。

 2012年~13年にかけての組織改革の結果は、数字に顕著に現れた。2014年の離職率は13.6%と、前年の32.1%から大幅に激減。しかも経常利益は過去最高を記録している。昨年の離職率も12%。2014年の数字がフロックでないことの証明だ。