「弊社から年間にかなりの仕事量を発注しているので、ワーカーにとっては仕事の安定供給先として信頼をおいてもらっています。だからワーカーが集まりやすいという側面はありますね。また、現場で施工管理を行うスーパーバイザーのタイ人が育っているので、彼らと工場、営業の三位一体で調整し、予定通りに終わらせることができている。この仕事で大事なのはスーパーバイザー。頭に立つ人材がしっかりしていないと下は言うことをきかなくなるので、スーパーバイザーの教育や施工品質のためのミーティング、QC活動を絶え間なく実施しています」

 オカムラで働くスーパーバイザー同士の間に、先輩が後輩を育てる文化も生まれているそうだ。タイでは、日常的な業務指導に加えて業務外を含めた交流を熱心に行うと、仕事にもプラスに働きやすい。「どうしてスーパーバイザーはそんなに熱心なのかは、私たちとしても不思議なんです」と井上氏は言うが、品質向上にかける姿勢ときめの細かな教育体制がスーパーバイザーのロイヤリティを醸成し、ちょっと大げさに言うと、オカムラのために一肌脱ぐかという家族的連帯感が醸成されているのだろう。

 什器は丈夫で安心安全だし、価格もまあ条件内。何よりオカムラに頼めばちゃんと帳尻を合わせて売り場をしっかりと仕上げてくれる上に、その後のメンテナンスも安心だ。チームワークが築き上げた信頼感がオカムラの成長を支えている。

ドラッグストアの什器については日本国内でも豊富な実績を持つオカムラ。化粧品販売店をチェーン展開するタイのビュートリアムも納入先のひとつだ。
ドラッグストアの什器については日本国内でも豊富な実績を持つオカムラ。化粧品販売店をチェーン展開するタイのビュートリアムも納入先のひとつだ。

常夏の国、商品の入れ替えは少ない。となると…

 とはいえ、毎年10月から11月のスケジュール調整は至難の業だ。

 「日本の場合、繁忙期は2月、3月の決算前とお中元シーズン、クリスマスやお歳暮のシーズンの3回に分散しますが、タイでは12月決算の企業がほとんどで、クリスマス商戦前にピークが集中するので、この時期はなかなか人が集まらない。だから、今から気が重いですよ(笑)」

 でも、このピーク時をちゃんとクオリティを維持して乗り切るのが大事だと松本氏は言う。

 「競合にあたるタイのローカル企業の技術力は年々高まっていますし、いずれは追いつかれるでしょう。でも、サービスレベルにはまだ相当の開きがある。ノウハウ獲得には時間がかかりますからね。いつもきっちりと掃除をして現場を後にするとか、仕事のチェックリストを作ってすべて確実にクリアするとか、タイの企業がやらないことを徹底して安定的なビジネスを実現させたいですね」(松本氏)

 什器に求めるタイ人の志向に応える努力も重ねている。

 四季がある日本では、商品の入れ替えは頻繁だ。例えば生活用品売り場では、春には花粉症対策グッズが、夏には日焼け止めや涼感を演出する制汗剤が、秋には保湿用の商品が、冬には風邪薬や使い捨てカイロなどがゴールデンゾーン(什器の一番目立つ位置)に陳列される。気温、湿度、カレンダーによっても商品はこまめに入れ替わり、商品が変われば什器の棚の高さも変えなければならない。什器の模様替えは日常茶飯事といっていい。

 一方、タイは常夏の国。細かく見れば違いはあるが、基本的には年中夏だ。季節に応じて商品の入れ替えを計画している棚はほんの一部。大半は、一度決めてしまえば棚の上の商品も飾り付けもそう代わり映えはしない。

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