「賞金は出していませんが、賞ごとに封筒には大きな文字で受賞者名を書き、盾とトロフィーを授与しています。賞をもらったことがないという女性が大半ですし、そもそもホテルに足を踏み入れたことがないという女性も多い。だからみな早くからドレスを用意してこの日を心待ちにしています。100人のスタッフがほぼ全員、参加していますね。予算はバカになりませんが、スタッフにとって重要な機会。今後も実施していきます」(河西氏)。

「Nail it ! TOKYO」で真面目に働き、ローンを組んで家を買えるようになった女性もいる。面接に来るお金もろくになかったという女性が働き始めてわずか1年で表彰を受けた例もある。地方からバンコクに出稼ぎにやってきて、役場の片隅で日がな薄給のコピー仕事に従事していた女性が一念発起。受付職に応募し、いまでは「まるで五つ星ホテルの接客のよう」とアカデミーの講師から高く評価され、「Nail it ! TOKYO」に欠かせない人材に成長した女性もいる。
現実は厳しい、でも人生は変えられる
もちろん、そんな女性ばかりではない。いまもトラブルはゼロではないし、人材は不足気味だ。人手が足りず、100%稼働できていない店もある。それでも売り上げが順調に伸びているのは「Nail it ! TOKYO」が女性がしっかりと自立できる枠組みを用意し、技術や接客を丁寧に教え、モチベーションアップに取り組み、儲けることと社会貢献をタイの地で両立させているからだろう。
「今後はリクルートのため地方の高校に行くことも考えています。メイドインジャパンのオリジナルネイルも製作していますよ。オリジナル商品があるとコストが下がるのでFC対策としても有効ですし、何よりスタッフの帰属意識が上がりますからね」(荒川氏)
ほかのどこにもないオリジナルのネイルを手にし、楽しそうに施術に励むスタッフの姿が想像できる。昨年の表彰式で受賞者の一人はこんなスピーチをしたそうだ。

「Nail it ! TOKYOは私を変え、私の人生を変えてくれた」
自らの意思と技術で人生を主体的に動かし、「Nail it ! TOKYO」で生活向上を実現する女性たち。今年の授賞式では受賞者からどんな言葉が飛び出すだろうか。
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