来店客を対象にした別ビジネスも検討している。「Nail it ! TOKYO」の席数は1店舗平均5席。1日10回転のペースで19の店舗が営業し、来店する女性客の数は月にざっと3万人におよぶ。

 「これだけ女子が集まる場所はそうはない。しかもみな1時間は必ず店にいるわけです。プロモーションなど何かできないかと模索しています。デベロッパーとの兼ね合いもあるので簡単ではないですが、先々には考えてみたいですね」と荒川氏は意欲を語る。

 Beauty Itの母体はイベント会社。ネイルに目がないタイの女性が大挙して集まる場所を見逃す手はない。タイの女性の指先を美しく変えてきた。「Nail it ! TOKYO」からユニークなプロモーションが飛び出すかもしれない。

 店舗数の目標はタイ国内に500店舗、バンコクに150店。ゴールまでの道のりは遠いが、まずは順調に動いていることは確かなようだ。そう尋ねると、荒川氏は苦笑しながら次のように否定した。

指名制をとっていない「Nail it! TOKYO」では、ネイリストの技術や接客の均質化は大きな課題だ。
指名制をとっていない「Nail it! TOKYO」では、ネイリストの技術や接客の均質化は大きな課題だ。

 「内実は大変です。何よりも人材を定着させるのが難しい。スタッフ同士のもめごともしょっちゅうです。店内でお客様を前にしてスタッフが殴り合いをしたこともありました。スタッフがお客様にぶち切れたこともあります。ちょっとありえないですよね。微笑みの国のダークサイドを垣間見ました……」

回転率と定着率の向上はやっぱり難題

 ネイリストの給料は基本給に加えて、個人売上がインセンティブとして支給される。稼ぐ人であれば給料は月3万バーツ(約10万円)以上。タイの大卒者の初任給が2万バーツ(約7万円)程度であることを考えると上々の数字だが、もともとこの業界は定着率が低いことで知られている。とりわけ駅中にある「Nail it ! TOKYO」のスペースは狭く、その中で高回転で客をさばかねばならない。

 技術や接客マナーの均質化も課題の1つ。「Nail it ! TOKYO」では指名制は導入していない。誰が担当しても同じようなサービスを提供できる店をモットーとしているからだが、目標とする「カジュアルだが失礼のない接客」にばらつきがあるのは否めない。売り上げや勤怠状況からスタッフをランク分けし2カ月に一度評価を行っているものの、上昇志向がなく、低い評価に甘んじているスタッフもいる。人材の教育、育成、定着。日系企業がどこもぶつかるこの問題を「Nail it ! TOKYO」はいかにして乗り越えているのだろう。

 「まだ乗り越えてはいません(笑)。現在進行形ですが、まずはルールを厳格化しました。ドタキャンなどは給与から差っ引き、素行不良者は思い切ってやめてもらいました。頑張りたいスタッフが続けやすい環境を作るためです。厳しくする一方で、報奨にも力を入れています。アメとムチの両方使いは効果的でしたね。定着率が上がりました」(FC事業担当の河西利晃氏)。

 出店に向けて人材を確保するため、2017年2月には「Nail it ! academy」を開校した。授業料は1万バーツ(約3万4000円)。卒業後に「Nail it ! TOKYO」で働けば授業料はゼロ。爪の病気からネイルの歴史、ベーシックな爪の磨き方や切り方に始まってネイルデザインまで学べる1カ月のカリキュラムは趣味の習い事としても好評だ。河西氏は言う。

「Nail it! academy」での授業風景。ネイリストとして自立したい女性のほか、趣味の一環として通学する女性も。
「Nail it! academy」での授業風景。ネイリストとして自立したい女性のほか、趣味の一環として通学する女性も。

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