「チュラロンコン大学のすぐ裏にあるサイアムスクエア(若者が多く集まるショッピングモール)を舞台にプロモーションを行いました(笑)。反響はありましたよ。多少大学によって濃淡はありますが、フルーツフルフェイスを紹介した動画は180万回再生されていますし、エンゲイジメントも50万ビューを突破しました」*エンゲイジメント=すべてのポスト、ページでLIKE、シェア、投稿をしてくれた総数

フルーツフルフェイスの機械の中に入ってポーズを取り、友人にスマホで撮影してもらう。「記念写真」に目がないタイ人心理を突いた仕掛けだ。
フルーツフルフェイスの機械の中に入ってポーズを取り、友人にスマホで撮影してもらう。「記念写真」に目がないタイ人心理を突いた仕掛けだ。

 プロモーションを受けて、売り上げも右肩上がり。セブン-イレブン全店に導入されているスティック型20バーツの3つのフレーバー(ストロベリー、グレープ、コーラー)は欠品ぎりぎりの勢いで売れている。袋タイプも好評だ。

 だが、ミッション完了はまだ遠い。バンコク以外の地域でも「ハイチュウ」の認知を上げ、いかに広めていくか、そしてトラディショナルトレードをいかにして攻めるかという課題が手付かずで残っているからだ。

 タイの流通は、小さな食料品や市場などのトラディショナルトレードと、コンビニや大手量販店のようなモダントレードに二分される。両者の割合は、バンコクでは3:7だが、地方に行くとトラディショナルトレードの存在感が強くなり、割合は4:6へと変化する。「ハイチュウ」を見たこともなければ、食べたこともない消費者が一気に増え、知名度はがくんと落ちる。

ハイチュウが開く道

 トラディショナルトレードの店舗で販売するソフトキャンディは5バーツ以下の商品がメインだ。そこには「ハイチュウ」が入る余地はゼロ。バンコクも中心部こそ、東京と比べても遜色がない大都会っぷりだが、賑やかな場所からちょっと離れると細々と菓子や食品、雑貨も売る地域密着型小型店が根を下ろしている。

 「小さな店や学校の売店では、競合品の『SUGUS』などが1個1バーツ(約3円)とか3個2バーツ(約6円)で販売されています。1個1バーツで売れれば、店は50%の利益になる。この世界は安く卸さないと入っていけないんですね。相当体力のいる世界。『ハイチュウ』とは違う手を考えたい」

階級社会のタイでは20バーツのお菓子に手が出ない消費者も多い。バラ売りはそうした層を抑える上で必須の販売形態だ。
階級社会のタイでは20バーツのお菓子に手が出ない消費者も多い。バラ売りはそうした層を抑える上で必須の販売形態だ。

 トラディショナルトレードにいかに食い込むか。鍵になると思われるのが、森永製菓が2013年にインドネシアのキャンディ会社キノ社と合弁で設立した森永キノインドネシアの工場だ。ここでは、すでにハラル対応の「ハイチュウ」の生産を開始している。

 つまり、森永キノインドネシアには、ほどよいチューイング性があり、割れることもなく、気がつくと口の中で溶けて小さくなり、歯にこびりつくこともない不思議な食感の「ハイチュウ」を作る技術はあるということ。インドネシアは人件費を初めコストも安い。「ハイチュウ」というブランド名ではないにしても、タイのトラディショナルトレードを抑えるために、インドネシアで生産されたソフトキャンディが活用される可能性は大いにありそうだ。

 「ハイチュウ」がタイのディストリビューションを抑えれば、森永製菓が抱える他の商品力のある菓子やアイスクリームも乗りやすい。セレブ女子大生をメインターゲットに据えながらその実、がっちりと大衆の支持を集めるようになったとき、「ハイチュウ」は初めてタイに根付いた菓子になる。その道は着実に切り開かれているようだ。