「袋タイプは面を取る意味合いもあります。ぶらさがっていると『ハイチュウ』の顔が目立ちますからね。大袋タイプは大手量販店でもしっかりと売り場を作れる。袋で『ハイチュウ』をアピールする作戦です」

 7粒入りの小さな「ハイチュウ」は、競合商品への対策だ。タイのソフトキャンディ市場は、タイローカルの5バーツ(約15円)の「SUGUS」を筆頭に競合品が目白押し。2015年8月には、ガムやキャンディ業界の世界的巨人ペルフェティ・ファン・メレ社から「メントスチュウ」も参戦した。

どう見ても「ハイチュウ」を意識したとしか思えない競合品「メントスチュウ」。食べてみれば味の違いは明白なのだが…。
どう見ても「ハイチュウ」を意識したとしか思えない競合品「メントスチュウ」。食べてみれば味の違いは明白なのだが…。

 どう見ても、「ハイチュウ」をパクった…といって悪ければ、強く意識したパッケージデザインの「メントスチュウ」は15バーツ。手をこまねいていれば、「ハイチュウ」のシェアを奪われかねない。

 「ハイチュウ」の主要チャネルであるセブン-イレブンも、ソフトキャンディ市場のプレイヤーとして名乗りを上げた。

 「リサーチのために、毎日コンビニを回っていますが、6月のある日、キティちゃんをパッケージに採用したセブン-イレブンのPB商品『サワーチュウイキャンディ』が、我々の『ハイチュウ サワー味』のすぐ横に並んでいることに気づきました。価格は10バーツ(約30円)。セブン-イレブンからの事前通知? まったくありません。PBだけではなく、同じ時期には『マイチュウ』という競合品も並んでいました。それだけソフトキャンディは注目されている市場なのでしょうが、見るたびにぞっとしますね。じっとしているとやられるだけです」

 こう苦笑いするのは、2016年からタイ駐在事務所に加わったマネージャーの三角駿介氏だ。

 双子のように見える「ハイチュウ」と「メントスチュウ」を食べ比べれば、味や食感の違いはわかる。だが、価格が安いければそれで良しとする消費者も多いはず。7粒入りで12バーツのスティック型「ハイチュウ」は、安さに惹かれがちな客を押しとどめる役割を担っているのだ。

 いろいろな価格やフレーバー、形態が増え、客が「ハイチュウ」を見かける機会を広げたところで、池田氏は客とのコミュニケーション強化策に着手した。

大学構内でプロモーション?!

 「2016年1月から3月にかけて、バンコクの14の大学をコミュニケーションの起点にしました。知ってもらい、食べてもらい、良さをわかってもらった上で、彼女たちが24時間手離さないスマホで広めようという作戦です。具体的には、ハイチュウを積んだハイチュウカーで大学に乗り入れて、構内でサンプリングをし、箱の中に入ると「ハイチュウ」の文字やイラストともに顔が映しだされるフルーツフルフェイスという機械を使ったプロモーションです。コミュニケーションのプラットフォームもなかったので、1月には『ハイチュウ』のFacebookのファンページも立ち上げた。フルーツフルフェイスで撮影した画像を投稿してもらうほか、『ハイチュウ』ユーザーや新規ユーザーとのコミュニケーションを深める場と位置付けています」

大学構内でプロモーションを実施する際には、このハイチュウカーで乗り付ける。「ハイチュウだ!」と駆け寄ってくる大学生も多い。
大学構内でプロモーションを実施する際には、このハイチュウカーで乗り付ける。「ハイチュウだ!」と駆け寄ってくる大学生も多い。

 大学構内で私企業がプロモーションをできるのか。タイにおいては答えはYESだ。

 タマサート大学、カセサート大学、アサンプション大学、バンコク大学など有名な私立国立大学から許可を得て、「ハイチュウ」は販促活動を繰り広げた。唯一、タイの東大といわれるチュラロンコン大学だけは大学当局から許可が出なかった。

 そこで、池田氏は奇策に出る。

次ページ ハイチュウが開く道