単価アップと稼働率維持、答えはひとつしかない

 単価を上げても稼働率が下がらないようにするには何をなすべきか。

 「ひたすらお客さんのレビューを上げるしかありません。それにはレビューをこまめに見ること。レビューの中に向上のヒントが隠されている。それを1つひとつつぶしていくだけです」

 ココテルでは、レピュテーション・マネジメントなるシステムを導入している。平たくいえば口コミ管理システムだ。これを使えば、毎日メールでレビューが届き、フロント、ハウスキーパー、フードアンドビバレッジなど項目別に点数が集計されたデータも毎月送られてくる。届いたレビューの中身や点数を踏まえつつ、ココテルでは部屋とシャワールームをつなぐスペースに仕切りがほしいという要望に応じてカーテンを設置し、外の音がうるさいという声に対しては窓を二重にして防音対策を図るなど、いくつもの改善を施してきた。

 独自にアンケートも実施している。

 「集計すると、面白いぐらいに現実と呼応していることがわかります。辞めた人が多い時期や支配人が変わった時期、働いている人の意識が高くないなと感じるときにはクレームが増える。改善も大事ですが、従業員の心持ちや人間関係が何よりも重要。とはいえモチベーションを維持して意識付けするのが難しい。現在進行形の課題です」

 アンケート結果を改善に落とし込むのはある意味、簡単だ。だが、根本的な原因を探らなければまた別の問題が起きるだけ。人材マネジメントに絶対的な正解はなく、永遠に終わりがないことを自覚した上で「気持ちよくやりがいを持って働いてもらいたい」と考え行動するCEOは、ココテルの大きな強みだろう。

ココテルを支えるスタッフたち。ホテル予約サイトでは「スタッフのフレンドリーなサービス」は高く評価されている。

 2016年2月にバンコクに1号店をオープンした後、プーケットやクラビ、チェンマイにも進出を果たし、店舗数はただいまタイに5軒。稼働率は75~85%で推移し、とりわけバンコク店は絶好調。過去12カ月で86%の高水準を記録している。

 集客の鍵となるホテル予約サイトでのレビューもいい。「清潔」「寝心地がいい」「スタッフがフレンドリー」。ブッキングドットコムやエクスペディア、アゴダなど世界的のホテル予約サイトのレビューで高評価を得るのは、5つ星の高級ホテルか低価格のゲストハウスと相場が決まっているが、1泊5000円程度の三つh星ホテルとしては珍しいほど好意的なレビューが並んでいる。

シングルベッドを3台並べたファミリールーム。通常のホテルではほとんど例を見ないレイアウトだ。

 新店オープンに向けての準備にもぬかりはない。

 「以前は店を開くことが決まってから人を採用するパターンでしたが、いまは常時、店長を募集し、オープン前に予備軍を持っている状態。店長になれる人材を先に確保したら1カ月教育した後、既存の店舗で実地体験を積んでもらっています」

 タイの日系ホテルとしてはオークラホテル、スーパーホテルが進出しているがいずれも1店どまり。まだ5店とはいえチェーン展開に成功した日本発のブランドはココテルだけ。日本人をターゲットにするのではなく、外国人を幅広く狙っているスタンスも新鮮だ。投資家からのミッションは「時価総額2000億円企業」。アジアに主要都市に降り立てばココテルの看板が目に入ってくる。そんな未来へ向けての松田氏の挑戦はまだ始まったばかりだ。