グループに分かれて、日頃飲んでいる清涼飲料のカロリーをチェックする参加者たち。楽しみながら知識を深められるプログラムだ。

 しかし、ここで得た気づきが現実の行動に結びつかなければ意味がない。そこで、同社では、社員食堂内に「ヘルスステーション」を設置。主に、無糖の緑茶、健康飲料、米菓といった在タイ日系企業のヘルシー商品を販売し、さらに社員が自由に使える体重計や血圧計を置いている。自宅でこうした健康機器を持っている従業員はほとんどいないからだ。医務室には業務用体組成計も導入した。

 社員食堂で働くシェフへのトレーニングも抜かりはない。健康に留意したヘルシーメニューを社員に提供できるように、Master Chefというシェフトレーニングプログラムを開催し、計量と食材・調味料の選び方や野菜を使ったメニューづくりも指導している。従業員の子どもなど家族向けの食育イベントも用意した。従業員向け、家族向け、シェフ向け。多面的なプログラムを展開する理由を副社長の松井克哲氏はこう語る。

うなぎのぼりの医療保険負担

「社員の中で、40代の男性社員2人が脳血管の大きな手術をしたんですよ。リスクを減らすことができる病気なので、何かできないかと思って改めて周りを見てみると、BMIは高いし、高血圧や心臓病の人が増えていることもわかった。従業員向け医療保険の負担も増えています。2008年を100とすると私が赴任した2011年には125になり、143まで上がっている。

 でも、社員を見ていると食事で健康になろうという意識がないんですね。クイッティアオ(麺料理)にも、どかんと砂糖を入れてますし(笑)。タイ料理は味としては刺激的で美味しいんですが、いまのままでは体に良くない。次世代も見据えて、食事による健康づくりを進めようと考えました」

ロームのタイ法人、ROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltdの副社長をつとめる松井克哲氏。

 しかし、RIST側には健康づくりに関するノウハウがない。そこで松井副社長は、ちょうど従業員向けの医療保険の切り替えを検討していた時期でもあり、明治安田生命保険が出資している、タイの大手生保、タイライフインシュアランス社(以下タイライフ)の担当者に相談を持ちかけた。

「タイライフが提示した保険料は一番安かったんですが、声をかけたのはそれだけが理由ではなく、従業員の健康づくりにコミットした形でサービスを提供してもらえないかと考えたからです」

 これに応えたのが、2014年からタイライフに出向している明治安田生命国際事業部の佐藤弘和氏だ。

タイライフに出向している明治安田生命国際事業部の佐藤弘和氏.

「タイの医療費はここ10年で右肩上がりし、年によっては2桁の増加率を示した年もあります。タイ人の健康については私も気になっていました。医療費の右肩上がりを抑えるには、従業員の生活習慣に対する意識改革を指導する取り組みが必要です。でも、タイでそれを依頼できる団体や機関があるのかどうか、わからない。そんなときに、タイの邦人向けビジネス誌で職場健康づくりの連載コラムを書いている会社があることを知り、早速コンタクトを取って意見交換をしました」

 RISTの松井副社長のリクエストを受けた佐藤氏の期待にぴたりとはまったその会社が、先に挙げたワークショップやシェフ向けトレーニングプログラムなどを開発・提供しているMarimo5 Co., Ltd.(以下Marimo5)だ。社内の管理栄養士が独自開発した一連の健康教育プログラムは、タイライフの付加価値サービスの一つとしてRISTに提供されている。