FacebookやLINE、Instagramなど「無類のSNS好き」タイ人気質も市場拡大に手を貸した。投稿された画像や記事を見て、いろいろな化粧品に積極的にトライする女性たち。追い風が吹く市場を見逃す手はないと、日本の化粧品メーカーのタイ進出意欲は高いが、石橋氏が言うように成功例は極めてまれだ。

 「たまに、当たる日本の化粧品もあるんですよ。でもそれは偶発的なヒットであって、たまたまその化粧品がタイ人女性の志向に合っていたからに過ぎません。そこから学ぶこともないですね。残念ながら、日本のメーカーは海外で売るノウハウがないように思います」

 ミロットラボラトリーズは、化粧品に加えてヘアケアやトイレタリー、サプリメントなど健康食品も手掛けているが、オリジナルブランドはゼロ。間口は広いものの、100%OEMに徹し、相手先ブランドとバッティングすることがないため、顧客からの信頼は厚い。200本、500本の小ロットから10万個、20万個の大ロットまで調整可能な生産ラインと、保税工場(外国から輸入した資材を、税関の輸入許可を得ず関税を支払わない状態のままで蔵置できる工場)を持ち、関税や消費税を納めることなく国内販売とタイからの輸出に対応できる体制を備えているのは、タイの化粧品OEMでは同社だけ。他を圧するアドバンテージが奏功し、顧客の顔ぶれは、タイ、欧米、日本と国際色に富む

化粧品業界の展示会でも存在感は高い。製品の15%は日本向け、50%が欧米向け、残りがタイ国内で販売されている

 しかし、日本企業は明らかに劣勢だ。

売れないとすぐ価格のせいにするが…

 「まず問題なのが、メイドインジャパンだったらタイでもどこでも売れると思っていること。そして、現実に売れないことがわかると、『ああ、価格が高いから売れないんだな』と安直に考える。確かに日本の製品は高いんですが、高いから売れないわけじゃないんですよ。売れているスキンケア化粧品の中には、1本400バーツ(約1300円)、もっと高くて1200バーツ(約3900円)のモノもありますから。それらは全部タイ製です。でも、日本のメーカーは売れない理由を価格に押し付けて逃げるんです」

 売れない本当の理由はどこにあるのだろう。

 例えば、洗顔料の場合、日本人はさっぱり、あるいはしっとりした洗い上がりを好むが、タイ人が好きなのはどちらかといえば「ぬるっ」とした洗い上がりだ。日本では香りの強いボディクリームやハンドクリームは敬遠されるが、タイでは逆。日本人からすれば鼻を突くような香りが好まれる。

 化粧品の効果に対する考え方も違う。効果を期待するものの、できれば良いものを長く使い続けたい。こう考える日本人に対して、タイ人は即効性を追求する。日本で人気の水のようなさらさらとしたテクスチャーの日焼け止めは受けず、売れるのは白くべったりとした大容量のクリームタイプ。実際に肌が白くなるわけではないが、クリームをぬればつけた瞬間に肌が白くなるのが受ける理由だ。あまりにもインスタントな効果を追い求めすぎているように思えるが、それが一般的なタイ人女性の志向であれば、尊重するしかない。 

 しかし、現実は違う。