何回か催促して電話をして、やっと向こうもこちらの本気モードを察して動き出す。「メールをしたけれど返事が来なかったので、タイでの商売は諦めました」という企業は少なくないが、バイヤーからの連絡をただ待っている時点でアウト。相手に動いてほしかったら粘り強く動く。それが鉄則だ。

 ワンナワス氏からはこんな発言も飛び出した。

「現場に行って現物を触ってタイの現実を知ってほしい。それが前提です」とワンナワス氏は強調する。

 「タイへの進出に本気の企業って、どれぐらいあるのかな、と時々考えてしまいます。日本の市場が頭打ちの中、10年後、20年後を考えたときにいまやらなければならないことは、日本で作っているものを何の準備もせずにタイに持ってくることじゃない。リスクを取って、時間も手間もかけて、ちゃんと拠点を作ることだと思うんですよ。でも、タイは近いし楽しいし(笑)、仕事を『ついで』としか考えてない会社も少なくないのが現実ですね」

「ついで」が通じるわけがない

 つまるところ「社長が自ら動かない企業は成功の確率が低い」とワンナワス氏は言う。

 「社長がタイにまったく来ないで、ほとんど権限がない部長課長クラスを送り込んで済ませようとする企業は厳しいですね。年齢は関係ないです。67才で積極的に売り込みに来ている社長さんもいますから。『助成金が出るからとりあえずタイに来ました』とか、自分たちの日本でのやり方のまま、なんとなくタイでも売れればいいなあと思っているようなところも成功の見込みは薄い。そういう会社は、結果が出ないと『ダメか。やっぱりタイでは合わないか。じゃあ国内でいいか』と簡単に諦める(笑)。結局、本気ではないんです」

 大企業ならいざしらず、リスクも取らず、社長が本腰を入れない中小企業を優しく受け入れてくれるほど、タイの市場は甘くない。

 タイと日本の架け橋になりたいという気持ちが強いだけに、ワンナワス氏の言葉は鋭く、耳に痛く、そして少し哀しい。さて、海外進出を計画する日本企業は彼の指摘をどう聞くのだろうか。