前述の「YUZUFUL」は、タイ人には未知のフレーバーだが、酸っぱくて辛い風味はタイ人好み。現に、豆腐や焼き鳥、海苔のお菓子と合わせて実施している試食販売は好評だ。

スーパーや展示会で「YUZUFUL」を試食販売。現地生産で価格を抑えたことで、タイ人の購買意欲が高まった。

 「日本人には意外でしたが、特に海苔のお菓子と『YUZUFUL』の組み合わせが受けている。そこで、いま海苔メーカーに『YUZUFUL』フレーバーの商品ができないかと商談を持ちかけています」と高橋氏。自らの足でメーカーを探しまわり、契約にこぎつけ、チャネル開拓を実現させた行動力は健在だ。

 タイ人は日本に山のように押しかけているから、タイ人は親日だから、タイ人は日本のモノが好きだからという発想はあまりにも短絡的。「いまタイにないものだから売れないだろう」と排除することなく、タイ人にとっての魅力やメリットを精査するプロセスが欠かせない。

 価格政策や商品力に直結するが、事前の情報収集が不十分なのは失敗する企業の共通点だ。タイに視察に訪れても、見るのはバンコク中心部を走るBTS(高架鉄道)で立ち寄れる場所ばかり。これでは、タイの表層しか目に入らない。中心部をちょっと離れるだけで華やかな都会とは対象的な風景が姿を現し、そこにこそタイの一般的な暮らしがある。

「本気の企業って、どのくらいあるのかな」

 「BTSで移動しただけでは、バンコクの都会っぷりに騙されて日本に帰ることになる(笑)。当たり前ですが、タイ人に話を聞くことも必須です。以前、こちらで焼肉屋を開きたいとやってきた方は、こちらで日本人としか会ってなかった。それではタイでやっていけません。私は、これまでタイのバイヤーと日本企業を数えられないぐらいマッチングさせてきましたが、バイヤーから内緒でよくこう言われます」

「『誘ってもらったのはありがたいけれど、買いたくなるモノがないよ』『これじゃダメだよ』って。多くの人が、ちょっとタイに来ただけで分かった気になっている。もっと準備をしましょうよ。現場に行って現物を触って現実を知ってほしいです」

 粘り強さと行動力に乏しい企業も、成功はおぼつかない。タイ人は一般に一度会っただけの人間をそう簡単には信用しない。熱意を見せて初めて動く。タイ人の会社と手を組んでビジネスをする場合、何度も出向いて、ようやくオーナーは『この日本人は本気だな』と思い始める。

「メールも同じ。日本人はメールを送るとすぐに返信が来るものだと思い込んでますが、タイでは一度では戻ってこないと考えてください。見積もりがほしくてメールをしても返事をなかなかもらえないのが普通です」