「ゆずすこ」の日本での発売開始は2008年。ゆず皮と酢とこしょう(唐辛子)をブレンドした液体調味料は、ステーキやピザ、パスタ、マリネなど応用範囲が広く、独特の風味を演出することから人気が広がり、福岡の土産品として大ブレイク。メディアで紹介される機会が多く、いまでは人気は全国区だ。

 同社は、「ゆずすこ」の発売当初から海外展開を積極的に推し進め、タイの前に、米国やフランス、シンガポールに輸出ベースで進出を果たしている。だが、輸出すると1本540円の「YUZUSCO」は、最低でも250バーツで売らなければ商売にならない。2500円の調味料。タイではほぼ絶望的だ。

「ゆずすこ」転じて「YUZUFUL」に

 「日本の味を世界の幅広い層に味わってもらうのが海外進出の目的です。でも、輸入品では値段の壁で果たせない。そこで、現地の食品メーカーを探しまわり、ここぞと思う会社に委託して、タイで生産することにしました。タイは人件費が安いし、何より資材が格安。そのメリットを活かせば、多くのタイ人にこの味を届けられると考えました」(代表取締役の高橋努武氏)

 材料については、メインのゆずだけは福岡から輸入し、唐辛子や酢はタイで調達。日本と同じ配合で、2013年から生産を開始した。タイでの商品名は「YUZUFUL」。「ゆずをふる」と、「ゆずがたくさん(FULL)」と「役に立つ(USEFUL)」をミックスした造語である。

高橋商店がタイで委託生産している「YUZUFUL」。柚子胡椒の液体調味料「ゆずすこ」と同じ配合で生産。辛くて酸っぱい味はタイ人好み!?

 まず飲食店に業務用として提供した後、2015年からは小売りにも進出。スーパーマーケットのチャネルで、小売り価格約90バーツ(65g入り)で販売している。「10倍の法則」を適用すれば1本900円の感覚だが、タイではタバスコも同程度の価格で販売され、普及している。現地生産を果たすことで、高橋商店は安くはないにしても、ちょっと手を伸ばせば届く価格帯を実現できたのだ。

 「YUZUFUL」は、現在、フィリピン、カンボジア、香港、オーストラリアにも輸出している。日本からの輸出品と比較的安価なタイ製を使い分ける戦略で、進出国は18カ国にまで広がった。リスクを取って踏み切ったタイでの生産は、高橋商店の海外展開を後押しする原動力といってもいい。 

 タイで売れるための2つめの条件は、商品力。これは、「タイ人にとっての商品力」であることは言うまでもない。

 「例えば、こたつはタイでは売れません。高級な醤油もそうですね。バンコク中心部には日本食レストランがたくさんあるので、タイ人は日本食が大好きなんだと思い、つい上質な醤油も簡単に売れると期待してしまいますが、タイ人が刺し身を食べるときは、わさびが目当て。醤油の風味は正直いってどうでもいい。わさびを食べたいんですよ。これを知らないと失敗します」