バンコクの洒落た店でカフェラテを頼むと1杯100バーツはする。「10倍の法則」を当てはめると、これはタイ人にとっては1000円くらいの感覚だ。日本人でも躊躇する値段だろう。

 しかも、輸入品の場合はさらに値段が高くなる。

 日本の製品をタイに輸出すると、運賃、関税、7%のVAT(付加価値税)に卸や国内の物流業者、小売へのマージンなどがプラスされて、売価は食品の場合でざっと2倍、お酒だったら3倍、雑貨であれば1.5倍に跳ね上がる。 

 「例えば、日本で約1000円で販売されているCHOYAの梅酒(1.8リットル)をタイに持ってくると約1000バーツになる。これは、タイ人には、日本人にとって1万円くらいの感覚です。どんな超高級酒ですか、というレベルになるんですよ」

 この感覚を理解せず、「中身は日本製だし、使えば良さがわかってもらえるはずだし、日本好きのタイ人だったら買ってくれるだろう」と、多くの日本企業は考える。これが失敗のもとだ。

 「日本人は近い将来、タイの経済が成長を続け中間所得層が増えていくと考えていますね。もちろんその通りなのですが、私の見立てではGDPが日本並みになるにはおそらくあと50年、100年かかる。つまり、輸入品ではずっと市場が狭いまま。多くの人の利用は見込めません」

日本製カップヌードルは1000円の超高級カップ麺

 高級品市場にこだわっていてはニッチなままで終わる、というのがワンナワス氏の見立てだ。マスを獲得するための方法はただ一つ、現地で生産すること。

 例えば、輸入品のCHOYAの梅酒が超高級品化してしまう隙をついて、タイを拠点にした日系の食品メーカー、ツバキ・フードサービスは、タイ北部の高山地で取れた梅を使って梅酒を作り、「Kachaうめ酒」として販売。好評を博している。価格は180ミリリットルで120バーツ。1200円ぐらいのお酒であればタイ人も買いやすい。

 日清食品の「カップヌードル」は、輸出すると諸税込みで売価は約100バーツに膨れ上がるが、現地生産を果たすことで価格を13バーツに下げることに成功した。タイ人からすれば、1個1000円の高級カップ麺が130円のお手頃品に変身したわけだ。

 現地生産による効果は、柚子胡椒を液体化した調味料「ゆずすこ」を製造販売する高橋商店の取り組みからも明らかだ。