社会貢献活動は、毎回、ほとんどが地方出身の従業員の提案を受け、彼ら彼女たちが卒業した小学校の壁を塗り直したり、故郷の道路をコンクリート舗装にするといった、従業員の出身地貢献活動として機能している。

 「工事の引き渡しの日には我々も地方まで出向き、学校関係者だけではなく村役場の人も参加するセレモニーに参加します。来賓者のスピーチが終わったら、提案した従業員も親御さんの前でスピーチをしますが、親御さんには『うちの子が良いことをしてくれた』と感動していただけますね。これまで社会貢献活動の提案をしてくれた従業員は10人いますが、10人が10人とも提案活動の提案件数が多いんですよ」(大山氏)

2012年の社会貢献活動では、従業員の出身校(小学校)の校門を新しくした。最後に校庭でセレモニー。子どもたちが手にしているのはもちろんカルビー製品。
2012年の社会貢献活動では、従業員の出身校(小学校)の校門を新しくした。最後に校庭でセレモニー。子どもたちが手にしているのはもちろんカルビー製品。

 セレモニー終了後には、学校でカルビーのお菓子を配り、未来のファン育成も怠りない。その夜、経営陣は従業員の実家に泊まり、庭先にむしろを敷いて家族全員と食事をし、水シャワーを浴び(地方はほとんどお湯シャワーはない)、夜は雑魚寝で眠りにつく。ただポンと寄付をするだけの社会貢献活動ではない。経営陣と社員との距離を縮め、一体感を醸成し、社員とその家族には誇りをもたらし、勤労意欲の向上にも直結している。

社会貢献活動の際には、経営幹部は提案した従業員宅に寝泊まりし、一体感を高める素朴で濃密な時間を過ごす。
社会貢献活動の際には、経営幹部は提案した従業員宅に寝泊まりし、一体感を高める素朴で濃密な時間を過ごす。

 2010年からスタートした奨学金制度も好評だ。従業員の子どもを対象に年に2回実施している制度で、条件は子どもの成績が通知表で3以上、かつ、親の人事考課がB+以上。1回の支給金額は小学生で2500バーツ(約8000円)、中学生で3000バーツ(約1万円)、高校生で4000バーツ(約1万3000円)。学用品から教科書、制服、靴まですべて揃う金額だ。

親が悔し泣き「これからがんばります」

 「ある従業員から『私は悔しい』と泣きながら言われたこともあります。理由を聞いたら『うちの娘は成績が良いのに、私がBの評価しかもらっていないので、奨学金がもらえない。娘に顔向けできないので、これからがんばります』と言うんですね。皆自分の家族のためにがんばるという気持ちが強いので、会社が一生懸命働いてくださいという必要がないんです(笑)」(大山氏)

 年末の最後の出勤日にお坊さんを呼んでタンブン(功徳)をするのは、いかにもタイの会社らしいが、同社はその後、カラオケ大会を実施。その場でボーナスを支給している。

 「まず副社長から今年の目標と実績、売上や利益、提案件数や事故件数などを発表してもらい、場を盛り上げていきます。そこに私が登場して、サプライズ的にボーナスを支給します。一昨年はタイ人が大好きな金のネックレスを贈りましたが、昨年はスーツケースにキャッシュを入れ、『これを配ります』と言って金額を発表しました。拍手で大盛り上がりでしたよ」(松尾氏)

 楽しいイベントが大好きで、家族思いで信心深く、子どもの教育にも熱心で、わかりやすい目標や実利に目がない。カルビータナワットはそんなタイ人を理解し、タイの文化に敬意を払い、従業員のプライドを尊重し目に見える形で表してきた。従業員とのコミュニケーションも通訳なしだ。郷に入れば郷に従え。異国に進出するのだから当たり前といえば当たり前だが、多くの企業ができそうでできていない。

 海外進出の基本の「き」を徹底しているカルビーは、強い。