「約300社中、たったの3社でした。この3社は過去、尿検査に全力を傾けて不正薬物の撲滅に取り組んできた企業。不断の努力のたまものです。あとの会社は多かれ少なかれ使用者がいました。社長専属のドライバーがクロ、というケースに遭遇したこともありますよ。ドライバーの薬物使用率はけっこう高いですね。ひどいところでは全体の3割がドラッグユーザーという会社もありました.。いったいどんな製品を作っているのか、どうやって工場を運営しているのか不思議でなりません」(A氏)。

 従業員の3分の1が不正薬物の使用者という工場…想像するだに恐ろしい。しかし、これがタイの現実だ。

 不正薬物検査のメリットは、使用者をその場で浮き彫りにするだけではなく、長期的には売人の排除に結びつく点にもある。再び検査員のA氏。

 「工場に不正薬物の使用者がいれば、ほとんどの場合、内部に売人が潜んでいますが、売人自身は(不正薬物を)やらないことが多いので、検査ではなかなか引っかからないんです。でも、定期的に精度の高い検査を実施すると、不正薬物のユーザーは検査に引っかかりたくないので薬をやめようと考える。そうでない場合には検査で発覚するので、多くの場合、会社を辞めざるを得ない。そうなると売人は商売ができなくなるので、工場からいなくなります。大事なのは売人がいない環境を作ることです」

 売人がいなければ、仕事中に簡単に不正薬物を手に入れることはできなくなる。工場全体をシロにするには、元を断つのが一番いい。精度の高い定期的な検査の意味はそこにある。

尿検査と違って、煩わしい手間は一切不要。それでいて1回の検査で17種類の不正薬物が検出できる。
尿検査と違って、煩わしい手間は一切不要。それでいて1回の検査で17種類の不正薬物が検出できる。

徹底した水際作戦が効果的

 A氏はさらにこうも指摘する。

 「タイでは、不正薬物の使用が発覚しても、労働法上その場で即刻クビにはできません。会社によって対応が若干違いますが、薬物が検知されたら更生のチャンスを与えて、2か月後ぐらいにもう一度検査をし、使用が認められなければそのまま。使用がわかったら退職勧告、というところがほとんどです。弊社のサービスでクロの判定ができてもタイの警察に証拠として認められているのは今のところ、尿検査のみ。精度が低い上に、タイには不正薬物使用者のデータベースがないので、過去に不正薬物を使用したことのある人がそれを隠して転職することはいくらでもできます。その点、この機械なら使用者のスクリーニング(洗い出し)を効果的に行える。検査はできれば入社前、あるいは試用期間中にもやった方がいい。未然に防げますからね」

 職場に使用者が1人でもいれば周囲に悪影響を及ぼしかねない。そのうち「商売のチャンスあり」と売人が入るこむ可能性は大いにある。

 「そう。水際作戦と定期的な検査。不正薬物を撲滅するには根気よく検査を続けるのが一番です」

 検査現場で数々の修羅場を見てきたA氏の言葉には説得力がある。

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