検知できるのは、ヤーバーや大麻など代表的な不正薬物17種類。すり替えなど不正行為は不可能で、誤探知はゼロ。クロ判定が出れば一切言い逃れができない。

 検査員のA氏は言う。「検査方法は布で背中をさっと拭くだけ。あまりに簡単なので、検査が済んだ従業員から『もう終わりなの?』『これだけでいいの?』という声があがることも多いですね。従来、使われてきた尿検査と比べると探知能力は20倍以上。世界最高の分析能力は、犬の鼻とほぼ同じ精度ですが、犬は犬だけに検知しても『ワン』としか言えない(笑)。その点、この機械なら不正薬物の使用が明確にわかる上に、24時間疲れ知らずで働いてくれます」

専用の検査布で背中をさっと拭うだけで検査は完了する。手早く終るので、尿検査を嫌がっていた女性従業員にも好評だ。
専用の検査布で背中をさっと拭うだけで検査は完了する。手早く終るので、尿検査を嫌がっていた女性従業員にも好評だ。

 簡単な検査で済むので、1時間で約120人、1日に1000人の検査と検査結果取得が可能だ。検査に丸1日を要し、結果が出るまでに3週間近くかかる尿検査と違って、工場の製造ラインが止まったり、業務がストップする心配もない。

 手軽で早くて高精度。文句なしの検査方法だが、尿検査と比べると価格が高い。

 尿検査なら一人60バーツ(約200円)で済むところ、同社のサービスは300バーツ(約1000円)。1000人の従業員に対して実施すればざっと100万円の費用が必要だ。

 だが、そんなコストをものともしないアドバンテージが同社のサービスにはある。川村氏によれば―― 

 「尿検査の場合、2、3日薬を使用しないでいると薬が検知されません。検査があることを事前に知っていわゆるシャブ抜きをすれば、検査が骨抜きになるわけです。でも、弊社のサービスなら個人の代謝のスピードにもよりますが、1か月ぐらいさかのぼって不正薬物の使用を検知することができる。尿検査は安いことは確かですが、精度が低いので実は、費用対効果が非常に悪い検査なんです。尿を取ってくる時間や手間も非常にかかるし、いやがる女性も多い。

 不正薬物を使用していない真面目な人が煩わしい思いをしなければならない検査なので、いきなり数千人を尿検査するのではなく、まず弊社の検査でドラッグ使用者を確実に絞り込む。その上で、病院で精度の高い尿検査を行うのがベストだと思いますね」

全員シロの企業は、300社中、なんと……

 同社がサービスをスタートしたのは2015年11月末。タイにある約50の工業団地に進出している日系企業のリストをもとに電話を入れて営業活動を始めると、手応えは上々。順調に利用企業が増えていった。

 現在までに検査を実施した企業の数は450社。そのうち95%が日系の企業だ。リピート率は100%に近い。最初は一部の従業員だけに実施し、2度目にはその数を増やすという会社が多いため、リピートごとに数が増え、ユーザー数は同じでも、調査件数では2倍になるという。

 「みなさん尿検査では苦労されているんですね。手間ひまかけて熱心に尿検査を実施していたところほど、この検査の良さがすぐにわかる。口コミで導入する会社が増えていきました」(川村氏)。

 これまで検査を行った従業員36万人のうち、クロの判定が下されたのは全体の1.2%。うち男性が9割を占める。

 100人いれば1人か2人が不正薬物使用者という数字にも驚くが、もっと衝撃的だったのが、300人以上の工場で検査対象者全員がシロだった企業の数だ。

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