こっそり内緒で購入できる通販を利用する客が多い日本とは異なり、タイ人がコンドームを買うのは、ほとんどがちょいと立ち寄れるコンビニだ。タイにはブーツやワトソンズといったドラッグストアがたくさんあるが、コンドームの主要チャネルは町のコーナに必ずあるコンビニ、と、ほぼ断言できる。
中でも圧倒的な強さを誇るのがセブンイレブンだ。タイの流通は「一強多弱」。百貨店ならセントラルが、総合量販店ならテスコロータスが飛び抜けて強い。1位の座は絶対的だ。2位以下が束になってもかなわない。コンビニではタイ全土に8500店以上の店舗を構えるセブンイレブンが群を抜く。2位のファミリーマートは約1200店、ローソンに至ってはわずか30店ほど。コンドームを売るならセブンイレブンを抑えるしかない。

しかし、セブンイレブンのレジ前に導入されているコンドーム専用の什器に入るのは、4段×3の計12SKU(最小管理単位)。デュレックスががっちりと抑えている枠に入り込むのは、オカモトにとって至難の業だ。
「導入したらこれだけ売れます、という市場での実績がないと、扱ってもらえない。そこでまず、日系のローソンやファミリーマートで採用してもらい、ブーツやワトソンズでも入れてもらえました。そうして市場での認知度が上がった結果を受けて、2015年にセブンイレブンでの採用が決まったんです」(肥田氏)
「あえて一番上は狙わない」
実績づくりに貢献したのは、「003」の品質への評価だ。
薄く、装着しやすく、付けていないかのような感覚が得られ、丈夫で伸縮性がある。パッケージは格好良く、かさばらないので、ポケットにも入れやすい。2個入りなので、価格は安く、会計時の負担も少ない。一度使って「003」の機能を実感すると、次も必ず「003」を買う。そんなリピーターがセブンイレブンを納得させるデータにつながった。
現在、セブンイレブンには「003」のオリジナルに加えて、「003 アロエ」も導入されている。だが、2つの商品が置かれているのは、もっとも客の目につきやすい一番上の陳列棚ではない。店によっても異なるが、多くの場合、一番下の棚に鎮座している。それでもバンコクでは一番人気を示しているのはあっぱれだが、ゴールデンゾーンに移動すれば、数字はもっと伸びるに違いない。

今後について、セールスコーディネーターの山田浩貴氏は「正攻法でいきたい」と語る。
「一番良い場所に入れたいが、採用されて間もないので、まずは品切れが起きないようにして信頼関係を構築し、『003』の認知度をアップしていきたい。『003』シリーズの別のタイプを投入できるよう努力もしているところです。市場に出すまでは大変ですが、勢いに乗ってしまえば商品力がある。売れていく自信はあります」
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