日本では結婚式や披露宴を開かなかったり、少人数での式が増えたりして、結婚ビジネス市場の縮小傾向に歯止めがかかりません。けれどもインドでは、結婚ビジネスは年25%以上の急拡大を続けています。インドの結婚ビジネス市場は1兆9000億ルピー(約3兆円)で、日本(約2兆5000億円)を上回っています。
そんな伸び盛りの結婚ビジネス市場で、今、富裕層の間で人気を集めている結婚式があります。式当日、屋外パーティーの様子をドローンで撮影し、記念のショートムービーを作る「ドローン婚」です。
インドは「ボリウッド」(映画制作拠点となっているムンバイの俗称)を中心に、映画制作が盛んな国ですが、近年はその映画技術を使って10~20分の結婚式のショートムービーを制作するカップルが増えています。ドローンを使えば、空からのダイナミックなアングルで撮影できるため、富裕層を中心に好評を得ているのです。
とはいえ、ドローンを使えばそれだけ費用は高額になります。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるほどIT産業が発展しているプネー市にあるブライダルプロデュース会社のInnobella(イノベッラ)によると、利用料金は小型ドローンが12時間で2万5000ルピー(約4万円)。さらに、20分のショートムービーを制作するとなると、加えて20万ルピー(約31万円)が必要になります。
フルサービスを利用しようとすれば、通常の結婚式費用に、約35万円も上乗せされる計算です。様々なアングルで撮るためにドローンを複数台用いれば、費用はさらにかさみます。
しかし、富裕層はその程度の上乗せは全く意に介しません。式の最中に上空をドローンが飛び交うこと自体も、招待客を楽しませる演出であり、結婚式に派手さを求める若い富裕層カップルの間で、ドローンは今やマストアイテムになっているのです。
ロハスを背景に中国で人気の「ベジ婚」
派手婚のインドに比べて、洗練された質素さを追求する結婚披露宴が、中国では流行しています。それが、精進料理だけを提供する「全素宴」です(中国では精進料理を「素菜」と言います)。
中国では、クリントン元米大統領の長女のチェルシー氏や、中華圏で有名なシンガー・梁詠琪(ジジ・リョン)など、憧れのセレブがここ数年、披露宴にベジタリアンメニューを提供したことが話題になりました。
その流れを受け、ブライダル企業や披露宴を行うレストランが「全素宴」 のサービス、いわば「ベジタブル結婚式」(ベジ婚)を展開し始めたのです。
価格は10人掛け1テーブルで約3000元(約4万6000円、中国では人数ではなく、テーブル数に応じて料金が発生)。これは一般的な披露宴と同じ料金です。素菜とは言え、鶏肉の風味と食感の干し豆腐、蟹味噌風味のニンジンペーストなど料理の技術を駆使したメニューが次々と運ばれてきます。ベジタリアンや敬虔な仏教徒以外でも満足感のある、豪華な料理が楽しめるというわけです。
中国の若いカップルに人気の「全素宴」では、肉を使わない見栄えの良い料理が次々と出てくる
中国では古来、素菜が親しまれ、精進料理は日本以上に発展しています。また本来、仏教徒はその教えによって、「動物性の食品を食べない」のが原則のため、現在でも仏教徒向けに上海市内をはじめ各地に多数のベジタリアンレストランや素菜を提供する飲食店があります。
そのため、素菜が広く浸透しており、最近では若者の間で健康志向から素菜への支持が広がっています。
以前から素菜を提供する店で、一般的な宴会や忘年会を催すことはできましたが、披露宴プランを提供し始めたのは最近になってから。近年、中国ではロハスや癒しの要素を日常的に取り入れる女性が急増する中、そうした女性たちに「全素宴」は注目を集め、結婚式に独自性を出したい意向と相まって、一気にトレンドとなったのです。
韓国では出会い系映画イベントに男女が殺到
一方、日本同様に近年未婚率が高まっている韓国では、結婚以前の問題である、恋人ができない若者たちを支援するイベントが爆発的な人気を呼んでいます。首都ソウルにある複合映画館(シネコン)が独身男女を対象に出会いの場を提供する、その名も「ソロ脱出大作戦」というイベントです。
このイベントでは、特設のFacebookページで、独身男女をそれぞれ100人募集。集まった男女は、映画館の席に隣同士で座り、上映される恋愛映画『About Time』(邦題『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』)を鑑賞します。
上映終了後は隣席の異性に対し、過去の映画の名台詞を舞台上で叫ぶといったプログラムを用意するなど、アピールタイムが設けられています。そして、見事成立したカップルには無料の映画チケットがプレゼントされます。
実はこのイベントが大当たりし、男女計200人の募集枠に、倍率150倍の約3万人もの応募が殺到。応募時には自己紹介だけでなく、イベント参加への熱意を訴える情熱的なコメントが要求されます。難関を突破した当選者は、韓国軍兵士、女子校出身者、草食系男子など特徴のある人。あるいは、以前の恋愛から間隔が空いている人も優先的に当選しているようです。大きく話題になったことから、主催者側は今後も定期的に同様のイベントを開催していく予定です。
メガボックスがFacebookページで募集した「ソロ脱出大作戦」には若者の応募が殺到
本コラムでは、アジア各国の最新トレンドを発信している「TNCアジアトレンドラボ」の情報をベースに、トレンドを深掘りした記事を連載します。次回からは、アジアの食のトレンドについて、複数回に分けて紹介していきます。最初のテーマは「SNS映えする“フォトジェニック”なフード」です。アジア各国で広がる、拡散間違いなしの最新スイーツをまとめて紹介します。
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